一次通過のピンポイントチェック

2024年11月9日小説投稿と通過

何度か一次通過に関するまとめ的な記事を書いていますが、今回は端的にまとめてみたいと思います。

その前に、新人賞の予選通過に関してちょっと語らせてください。

小説新人賞の一次通過に必要なもの

だいたいですが、純文学・一般文芸は10%前後の賞が多いです。カッパツーや横溝正史ミステリ&ホラー大賞は例外です。

ライトノベルやライト文芸は賞によってまちまちで、数%~30%くらいまであるように思います。

どちらにしろ狭き門です。さらに、ここから二次選考~最終選考候補作が絞り込まれるわけですが、ともかくも一次選考を通過しなければどうにもならない。

ちなみに、一次選考で良作が見逃されることは実際にあります(受賞作が別の賞で一次落ち、他社で上位進出が一次落ちはあります)。個人的に、一次で良作が落とされるのは次のようなケースだと思っています。

・カテゴリーエラー
・下読みの力不足(というより好み?)
・規定違反

一次ではカテエラでも上げるという賞もありますが、それはレーベルカラー的なカテエラ(ストーリーやキャラクター)だと思います。ある種のカテエラとして「賞が求めている完成度」を考えておくべきです。

ストーリーは面白いのに完成度の低い作品がけっこうあります。この完成度で誤解してほしくないのは、「完成度=文章がうまい」ではないということです。むしろ、構成力やリーダビリティなどの物語の展開力を指しています。つまり、ストーリーの面白さと文章力だけを追求しても、一次で落ちるケースはあるということです。

ストーリーが面白ければ、リーダビリティはついてくるのでは?と思われがちですが、これもあまりイコールではありません。というのも、リーダビリティは(ある程度のストーリー力があることが前提ですが)構成力から生まれることが多いからです。

一次通過は常連が多いと思いませんか。一次を通過できるようになると、出せばほぼ(少なくとも半分くらいは)通過するようになる人がいます。なぜかというと構成力がついているからです。

文章の粗さはある程度直せますし、キャラクターも変更がききます。ただ、構成力だけはどうにもなりません。

賞によっては構成力などの小説としての基本力をしっかり見ているところと、そうでもないところがあるように思います。そういう意味でのカテエラも考え、自分に合う賞に応募するのがいいと思います。

※ストーリーやキャラクターが突き抜けていれば、破綻してようが、構成力がいまいちだろうが上の選考にいくことはあります(実際、友人の作品でそういうのを見ています)。今回は「一次を通過するには?」という意味で、例外的な傑出作はナシで話を進めています。

チェックポイントまとめ

一次通過するためにあったほうがいいもの

すべてを持つ必要はありません。ただ、複数あると通過しやすいと思います。とくに重要なものを太字にしています。

基本の小説力

構成力
・人物かき分け能力
・描写、説明のわかりやすさ
・セリフ力
・文章の読みやすさ

ストーリーやキャラクターについて

始めと終わりが一貫しているストーリー(※1)
時系列がわかりやすい
・どういう小説か前半でつかめる
・キャラクターが始めから終わりまで一貫している(※2)

(※1)目的は「姫を救出」なのに、結びは「パーティメンバーとラブラブで姫救出はサブストーリー」みたいなのはあまりよくない。書き方がよければ構いませんが、多くはブレたストーリーになりカタルシスがないです。

(※2)善人だと思っていた人が実は悪役だったなどの設定のことではありません。単純にキャラブレしているケースが多いです。そのキャラがそれをやるか?とか、お前そういうキャラじゃなかっただろうというのをけっこう見ます。

一次落選作の気になる部分

以下を1つ、2つやっているだけなら問題ないのですが(場合によっては1つでもアウトな場合もあり)、複数やっていたらけっこう厳しいと思います。

※管理人が読めてないだけだといわれたらそれまでなのですが、おそらく読書量は多いほうですし、平均的な本読み並には読めていると思います。逆にいえば、「管理人が読み取れない=平均的な本読みも読み取れないことが多い」と考えてもいいかなと思います。

序盤(というか冒頭)

・冒頭30ページで話がつかめない(純文学は別)。
・日常切り取りシーンが続き、なにも起こらない(純文学は別)。
・冒頭から説明が延々続き入り込めない(ファンタジーやSFに多く、書き手は「ここを抜けたらおもしろいから」というが厳しい。冒頭がうまい作品は他にあるし、冒頭が上手い人は力のある人が多いので最初だけでなく後半も面白い)。
・冒頭があまりにも類型的(転校・転勤初日、困っている人を拾って連れ帰るなど)。
・意外に思うかもしれないが、「プロローグで衝撃シーンを入れている=読者をつかめた」ではない。たとえば、冒頭で恋人が亡くなったシーンからはじめても、その次の段落がつまらないならリーダビリティはない。
・キャラクターが大量に出てきて覚えられない(区別ができない)。

中盤

・読んでいる途中でキャラクターに混乱して前のページに戻る(キャラの区別がつかない、または多すぎて覚えられない)。
・話が淡々としすぎている(日常シーンが続くなど)。
・話が進まない(序盤で起こったイベントに対し、新たな展開が見えない)。
・ここまできてもなにも起こらない(正直最悪)。
・現実ならハッカー、異世界なら影などの便利ツールが容易に使われて、主人公が情報を隠す(影が耳打ち、「そう、そんなことが……」と主人公がいうだけで、なんの伏線にもなっていない。読者はストレスを覚える)。
・後半への盛り上がりが見えない。

終盤

・いきなり重要キャラクターが追加(またはモブ中のモブに突然のスポットライト)
・いきなり重要設定が明かされる。
・オチがない(なくてもよいが、序盤のリーダビリティに対しての結末は必要)。
・伏線放置で終わる。
・話が終わっていない。
・現実ならハッカー、異世界なら影などの便利ツールが突然出てきて、主人公の活躍がない。
・突然大団円を迎える。

全体を通して

・ストーリーに無理がありすぎる。
・ストーリーや設定に問題がある(とくにエンタメや純文学は感性が古すぎる作品は落ちやすい気がする)。
・ストーリー(ミステリやSFだとネタ)がイマイチ。
・他応募作とのネタかぶりがある(かぶると落ちやすい)。よくあるテーマや設定、ストーリーは、他応募作と競合になる。
・出版しにくいネタである(最近の事件を下敷きにしていたり、作中人物に現在活躍中の有名人を使ったりしている)。
・主張がこれでもかと書き込んである(主張しても構わないが、小説は物語であることを忘れてはダメ)。
・キャラ設定に無理がある(天才設定だがそう見えない。魅力のない主人公なのにハーレム)。
・状況設定に無理がある(殺人事件の捜査から身内の警察官が外されない、アパートが火事になって見知らぬ男の家で暮らすことになる)。
・主人公がチートすぎる(チートがダメなのではなく、なろう系チートは公募では不利です)。
・エンタメ小説、純文学では、あまりに設定モリモリの主人公は魅力を減らす可能性あり(ミステリはやっても許される分野。SFとファンタジーはネタによっては許される)。

まとめ

読者視点からするとあまり面白いと感じないポイントリストのようにになってしまいましたが、いかがでしょうか?

多くの投稿者は、「自分ではできているつもり」だと思います。同時に、「そんなこといわれても自分で読み返してもわからない」という人も多いと思います。

ただ、一次選考でも完成度はある程度見られています(物語の展開力と、最後までしっかり書き切る力)。

文章力はある程度でも一次は通ります。むしろ、構成力(ストーリー展開力)、キャラクター、設定が重視されている印象です。何度も読み返し、可能であれば人に意見をもらってください。

構成力は書くほど力がついてくる印象です。落ちた作品を読み返して、冷静な目で自身のできていない部分を振り返ることも重要です。