小説公募の超えるべき山とは?
公募においては、まず1次通過をしなければはじまりません。
1次通過のあと、2次、3次とあるケースもありますが、大きくわけると次のようになると思います。
・1次通過
・最終の手前まで(1次通過前提)
・最終候補
・受賞
1次よりも2次のほうが嬉しいのは当然ですが、1次を通過したあとは、最終の手前まででまとめさせてください。理由は以下を読んでいただければわかっていただけると思います。
一次通過のレベル
賞によって一次通過のレベルは異なります。また同じ賞でも、時期によって異なるはずです。たとえば電撃大賞。一次を大きく絞るようになったので、以前よりもレベルが上がっているでしょう。
また、運もある程度あると思います。カテゴリーエラー、同じ箱(選者に回ってきた作品群を指します)に強力なライバルが何作あるか、選者と合わなかったケースなどです。
ただ、一次選考というのは、基本的にはある一定レベルの作品をピックアップする作業です。箱から何作品と決まっている賞もあるようです。
つまり、応募作の上位20~10%を選ぶ作業になります。
選者はどこを見ているのか?
いろんなところを見ていると思います。ただ、過去に角川キャラクター小説大賞の通過予想をしたり、友人に通過作の感想を頼まれたりした感じでは、一次通過作はひっかかりがなく(少なく)、ある程度のリーダビリティを持って読めるかどうかだと思っています。
条件を満たしていても落ちることはもちろんあります。ですが、一次通過作の多くは最低限この条件を満たしています。
・文章が読みやすく、ぶつ切りになっていない。
・説明はわかりやすいが、くどくない。
・描写が誰のものかわかりやすい。
・誰のセリフか混乱しない。
・どんなストーリーかわかりやすい。
・最初から最後まで興味を持って読める。
・大きな齟齬がない。
意外なことに、これらができていない人はけっこう多いです。
公募に送られてくる作品の多くは読めるものになっていると言われています。でも、読者が我慢すれば(もしくは好みに合っていれば)読めるだけで、「読みたい」作品かどうかは別問題なのです。
個人的な所感ですが、それなりに読めるのに一次のボーダー上にある作品に多いのが次の2つです。
・全体の10~20%(いわゆる書き出し)が説明パートになっていて物語が動かない。
・文章を書き慣れているのでうまく見えるが、無駄が多い。
なお、管理人は、一次通過=読者がストレスなく読める作品で、さらに続きが気になる作品であることが第一歩だと思っています。ですが、最も重要なのはリーダビリティだとも思います。リーダビリティが全編にわたって高いと、読みにくかろうが、わりと大きめの齟齬があろうが簡単に一次を通過してしまう印象です(知人の作品でそういうものをいくつも読んでいます)。
最終の手前と最終候補
一次を通過すると、次は最終に残れるかどうかです。
最終に残れるかどうかの山場の前に、「最終に残す候補」に入れるかという関門があります。
2次や3次まである賞では、これが「最終に残す候補」群になるのだと思います。1次から一気に最終という賞でも、支持の得られなかった作品(どうにか一次を通過した作品)と、「最終に残す候補」に分けられると聞いたことがあります。
そして、「最終に残す候補」というのは、修正すれば本として出せるレベルと考えていいと思います。
では、「最終に残す候補」と「最終候補」の違いは?
どうも漏れ聞く話をまとめると、編集(または選者)の押しがあるかどうかが大きいように思います。「この本を出したい」と後押しする編集(または選者)がいるかどうかです。ここで、後押しする人がいたとしても、明確な欠陥、足りない部分があると、他の方の反対で落ちることもあるように感じます(ここで後押しする人が諦められない場合に、拾い上げとしてデビューできたりするのだと思います)。
一次通過よりも難しいのは、「なにが編集(または選者)の琴線に触れるかわからない」という点です。
前提として、大きな欠陥がなく(欠陥があっても修正できると編集が判断するレベル)、読める作品であるのは必須です。
その上で、編集(または選者)がこれを世に出したい、いままで読んだことがないと思う何かが必要となるのです。
この一点で特化できると、多少文章が荒くても、ちょっとした欠陥があっても、最終候補まで上がってしまいます。なぜなら、特化=リーダビリティとなり、完成度が多少低くても「おもしろく読めて」しまうからです。
もちろん、この「何か」を持つ作品などめったに送られてはきません。そうなると、完成度が高い作品で、さらに編集(または選者)が押せる部分のある作品が選ばれる印象です。
多くの賞の応募要項、対談を見る限り、編集(または選考委員)は新しいものを求めています。結果として、なにがしか他と差別化できる設定、文章(雰囲気)、キャラクターが良い作品に票が流れるのだと自分は考えています。
受賞
レベルの高い作品があれば、すんなりとそれに決まるようです。そうでない場合、結局は、最終選考委員が強く押す作品が取るようです。
そのため、結果としてここでも「新しいもの」または「完成度が高くおもしろいもの」が強くなる印象です。
最終選考委員が違っていれば、受賞作も違っていたのでは?と思う選評もあるくらいなので、ここまでくる作品はどれも、編集が本として出せると考えたレベルなのだと思います。
その中で、最後の1冊(または数冊)になるためには、よほどレベルが高いか(または完成度が高く票を集めたか)、運があったかの、どちらかが要因となっているように思います。
まとめ
ほかの記事でも言っているのですが、おそらく多少の誤字脱字は落ちる理由にはなりません。あとで修正すればよいからです。
完成度というのは、誤字脱字ではないのです。
リーダビリティを削ぐ瑕疵、あまりにもご都合主義な展開、設定の矛盾(とくに修正が難しいものは致命的)などのほうが落ちる理由になると思います。
よく読み返して、作者の独りよがりになっていないかチェックしましょう。