小説の書き方 基本編~最低限必要な知識をつけよう~
書いたことがない人間がなにをいっているんだといわれそうですが、編集者を目指していたんです。編集者目指して学んだり、授業で書かされたりしたことはあるんです(短い間ですが投稿していたことも)。
学んではいるんですよ、一応。編集者にはなれず、作家を目指すほどのアイディアもなかっただけで。
小説を書くツール
なんでもよいのでは。多くの人はパソコンかスマートフォンを使っていると思いますので、エディタソフトなどを使って書きましょう。横書きで書く人も、縦書きで書く人もいらっしゃいますし、自分にあったものを選んでいいと思います。
また、パソコンは最低スペックのもので充分です。小説を書いて、多少のネットサーフィンをするだけならば、廉価パソコンで充分。画像や動画をいじったり、ゲームをするなら別ですが。そうでなければ高いパソコンを長く使うよりも、3万円~5万円のパソコンを3、4年で買い換えたほうが使い勝手はいいくらいです。
準備が出来たら次にすること!
「キャラクタ」「物語」「テーマ」をつくる
自分がどのタイプか判断しましょう。
1. キャラクターが先に出てくる
2. 物語が先に浮かぶ
3. 書きたいテーマがある
だいたいこの3つだと思います。1と2が同時だったり、2と3を一緒に考える人もいるでしょう。人それぞれなので、まず自分が思いついたところから手を付けていいのではないかと思います。
ただ、「テーマなくして小説を書く意味よ!」と教わりましたので、やっぱりテーマは大事なのだろうなと思います。
とくに純文学ではテーマのウエイトが大きいと思います。本格ミステリの場合は必須ではありませんが、社会派ミステリでは重要です。たとえば、刑法39条(心神喪失の場合)、冤罪と死刑制度などがよく知られています。社会派ミステリの場合、目新しいテーマがあるだけで上に行く可能性は高まると思います。
キャラクター小説やライトノベルでもあったほうがいいと思いますよ。純文学の「暴力と性」をテーマに云々というようなものではなく、「家族愛」や「主人公の成長」、「チートゆえの苦悩」など作品にあったテーマを選べばよいと思います。
・キャラクターからできる人は、主人公キャラにあった物語とテーマを作ってください。
・物語が先に浮かぶなら、キャラクタとテーマについて考えます。
・テーマがある人は、それを書き込めるようなキャラクタを作ることをオススメします(物語が先に浮かぶならそでもいいと思います)
「キャラクタ」「物語」「テーマ」はほんとうにそれでいいのか?
新人賞に出す場合はいったん考えましょう。それでほんとうに賞が取れますか?
・テーマは目新しいですか?
・もしくはよくあるテーマでも新しい視点になっていますか?
・ストーリーが単調ではありませんか?
・どこかでみたストーリーになっていませんか?
・キャラクターに厚みはありますか?
・キャラクターが既存作品に似すぎていませんか(とくにラノベ)?
「キャラクタ」「物語」「テーマ」を具体化する
プロットを作る1
まずはプロットを作るということになるのですが、これが必要ない人もいるそうですね(ほんとすごいなと思う)。プロットについては、人によっていろいろな書き方があるようですので、自分にあった方法を身につけてください。
よく聞くプロットの作り方は次の通り
あらすじタイプ
原稿用紙2、3枚から10枚程度に流れをまとめるやりかたです。
リストタイプ
まず、起こすべきイベント(エピソード)をリストアップします。それをただ並べるやりかたです。ストーリーができている人はストーリーに沿って、できていない人はリストアップしてからストーリーを作っていくことになります。起承転結などのカテゴリを作ってイベントを仕分けし、順番に並べていってもいいですね。並べたあとで、ストーリーの流れとして問題ないか確認します。簡単な年表みたいなものですね。
詳細タイプ
ストーリーの流れを書き、そこに配置するイベントをリストアップします。さらに細かいプロットを作る人は、イベントごとにどんな流れにするか、どんな会話をいれるかなども書き込みます。あらすじタイプ+リストタイプといった感じです。
初心者さんや、ストーリーが作れない人はリストタイプを選択!
付箋などに必要と思うイベント、書きたいイベントをリストアップします。その後、ストーリーになるように付箋を並べ替えます。付箋を使うと、足りないイベントを追加したり、不要なイベントを取り除くのが簡単です。また、イベントの並べ替えが何度もできます。プロットを作り慣れていない人は、まずは付箋に書きたいイベントをメモしてみましょう。
上の例は一太郎の付箋機能を使っています。紙の付箋(ポストイット)を使うほうが簡単かもしれません。
ストーリーが作れないという人は、ジャンルを決めたあと書きたいイベントをリストアップしてみてください。長編であれば、最低15個ほしいですね。それを並び替えることでストーリーを作ります。ある程度、ストーリーがまとまったところでさらに必要なエピソードを足してください。
プロットを作る2 メインストーリーとサブストーリー
短編・中編ではメインストーリーのみの場合も多いと思います。ですが、長編だとなかなか難しいです。メインとサブのストーリー両方で読者を引き込むことが大事だと思います。
具体例(高校の駅伝部の話)
高校生の駅伝部を描いた作品を書くとします。全国大会出場を目指しており、主人公(主くん)は駅伝を愛するそこそこの選手で、準主人公(準くん)は高校から駅伝に転向した選手とします。準くんは硬式野球のピッチャーだったのですが、肩を壊したことで駅伝へと転向。甲子園を目指すほどに運動能力が高く、走り込みのおかげでそこらの陸上部よりも長距離走を得意としていました。陸上部の顧問から乞われて入部したといういきさつがあります。
メインストーリー
・主くんと準くんがぶつかりあいながら全国大会を目指す。彼らは全国大会へ行けるのか?
・駅伝を愛する主くんと、先生にいわれて野球のかわりに取り組んでいるだけの準くん。はじめは準くんにいらだっていた主くんですが、「自分が陸上を失ったら」と考え出したことで気持ちが変わりはじめる。主くんが変われば、準くんも影響を受け少しずつ変わり始める。
サブストーリー
・受験に専念するようにプレッシャーをかける親との関係。
・気になるクラスメイト(女子)のこと。
・準くんの野球仲間が、「ピッチャー以外ならやれる。一緒に野球をしよう」と誘いにくる。準くんはすぐに答えを出せない。
・ライバル校のエースと交流。その後、トラック競技会で再会しライバル校のエースにコテンパンにされる。
というのが、サブストーリーとメインストーリーの例です。
サブストーリーは、メインストーリーを補強したり、メインに沿いながら物語に厚みをつけるためにあります。主人公各のキャラクタにも厚みがでますし、脇役を活躍させて読者の興味を引くこともできます。
メインとサブを分けて、物語の整理をしたほうがよいと思います。リストタイプや詳細タイプで書く人は、まずメインストーリーを時系列で並べ、その横にサブを配置するとよいかもしれません。付箋や文字の色を変えておくとわかりやすいですね
ストーリーを検証する
プロットができたところで、そのストーリーを検証してください。できればプロット後、日を置いてから見直したほうがいいです。
・ストーリーに流れはあるか
・ストーリーに矛盾はないか
・キャラクター心理に無理はないか
・メインストーリーが読者にわかりやすく伝わるか
・メインストーリーに山場があるか
山場はいくつかあっていいと思います。駅伝部の作品例では次の通り(数はもう少しあったほうがいい)。
☆主くんが準くんの苦しさを知って気持ちが変化する瞬間
・準くんが野球を終わらせ、陸上を取る
・レギュラー争い
・トラック競技会で負けたライバルとの争い(エース区間で誰が当たるのか)
☆全国をかけた大会
☆がメインストーリの山場でもあります。最初の小さな山場が「気持ちの変化する瞬間」で、最大の山は「大会(と結果)」です。これだけでは起伏に乏しいので、サブストーリーがいります。それぞれの山場で物語に起伏をつけ、読者の興味をひくことも大事です。
書き始める前に!
人称と文章のタイプ
何人称で書く必要があるのかを考えます。
個人的には、人称に優劣はないと思っています。一人称でも、三人称でも、うまい人が書けばうまいし、下手な人がかけば読みにくいです。どちらが上ということもないので、物語にあった人称を選ぶべきだと考えます。
人称に適した小説をまとめてみました。技術を必要とするのが一人称と三人称(神視点)で、技術のありなしに関係なくある程度かけるのが三人称(一元視点)だと感じます。なんでもありなのが三人称(一元視点)なので、初心者さんはまずこれで書いてみるのをおすすめします。
一人称
・心理描写が多い、または感情の変化が重要な小説
・主人公の語り口を工夫した小説(例:森見さんの『太陽の塔』)
・主人公の主観のずれを読者が楽しむ小説
・一人称による主人公の誤認を使うミステリ小説
三人称(一元視点)
・複数の視点で語られる小説
・主人公の主観だけでなく、客観視点も必要とされる小説
三人称(神視点)
・登場人物の心理、主観を描かない小説
・世界観が複雑な小説
書き出しを考える
読者に先を読ませることを意識してください。ストーリーが読めない作品に、読者はあまり惹きつけられません。
「先の読めない展開!」というのは、先が想像できないのではなく、先を想像しているのに、想定の上を行く作品を指します。または、ストーリーの方向性は分かっていても、キャラクターがどう動くか読めなかったり、いくつものラインが想像できて絞れなかったするケースです。
すべての情報、展開を出せというわけではありません。ですが、新人賞においては、読者が引き込まれるストーリーラインや、情報をはやいうちに出してしまったほうがいいように思います。
具体例をこちらに書いています。
最低限知っておきたい、小説のお約束事
「?」や「!」の取り扱い
「スランプだ!□君もそう思っているんだろう?□僕にはもう小説なんてかけないって」
というように、「!」「?」のあとに文章が続くときは1マス(□)あけましょう。
1マス下げ
・書き始めは1マス下げます。また、段落のはじまりも1マス下げます。
・「」のはじまりは頭から。ただし、「」あとの文は1マス下げます。
===具体例===
□サッカはスランプに陥っていた。
「かけない! かけないんだ!」
□頭をかき乱しながら叫ぶ。それでよい案が思い浮かぶわけではない。サッカはパソコンを前に頭を抱えて唸った。
□スランプのはじまりは恋だった。好きな人ができた。はじめは浮かれていたし、この経験を活かして恋愛小説を書くことにもした。順調だった。
例のように、1マス下げる部分(□)に気を付けてください。Web小説では必ずしも必要とはいえませんが、公募の場合は守ったほうがいいと思います。
ただ、純文学においては、これができていなくても入選したり、新たな文体としてこれを崩した書き手さんもいます。純文学においてのみ、覚悟さえあれば守らなくてもよい場合があります。
「」のお約束事
・「」のはじまりは頭から。「」のあとは基本的に改行して、1マス下げます。
・しかし、「」の改行は基本であり、次のようなケースはだいたい認められています。
同一人物のセリフの間に、動作などが入る場合や、カッコと地の文を混ぜた文体も見です。純文学になると、改行がなく会話と心情描写と情景描写がごちゃ混ぜというケースもかなり見かけます。
===具体例===
□サッカはスランプに陥っていた。
「かけない! かけないんだ!」
□叫んで頭をかき乱す。「どうせ俺には才能がないんだ」
□スランプのはじまりは恋だった。好きな人ができた。はじめは浮かれていたし、この経験を活かして恋愛小説を書くことにもした。順調だった。
===具体例===
□サッカはスランプに陥っていた。
「かけない。かけないんだ!」
□叫んで頭をかき乱して、「どうせ俺には才能がないんだ」と叫ぶ。そうしたところでよい案など浮かぶはずもない。
===具体例===
□サッカはスランプに陥っていた。
「かけない。かけないんだ!」と作家は叫ぶ。
「どうせお前には才能がないんだ」ともう一人の自分が叫ぶ。
□頭をかき乱したところでよい案など浮かぶはずもない。
プロの作家さんがやっているので、アリだとは思います。が、まずは基本の書き方に慣れてから崩していったほうがよいのではないかと。
おわりに
最後まで書き切る!
さあ、書き始めましょう!
とにかく最後まで書き切りましょう。まずはそこからだと思います!