「十二国記」シリーズ 最新刊の評判は?

2020年1月11日

2019年10月、11月、18年ぶりの新作『白銀の墟 玄の月 1~4巻』(小野不由美さん)が発売となりました。

戴極国の動乱が収まらない状態で終わっていた『黄昏の岸 暁の天』の続編ということで、十二国記ファンは発刊を待ち焦がれていたのですが……思ったよりも評判がよろしくないようです。4巻のAmazonのレビューが2019年12月04日現在269個、そのうち42%が☆3以下なのです(☆1が11%もあります)。

私も待ちに待った一人で早速読みました。作品としては素晴らしいのだと思いますが、十二国記ファンとしては「これじゃないんだ」感がちょっとあったことを否定できない。

著:小野 不由美さん 18年ぶりの十二国記シリーズ新作。2019年10月に1、2巻、11月に3、4巻が発売されました!

まずは、「十二国記」シリーズの説明から。ご存じの方は目次から飛んでください。

「十二国記」とは?

刊行の歴史

はじまりは、『魔性の子』(1991年9月)で、新潮文庫から発売されました。が、売れ行きが芳しくなかったようで、同じ世界観の別の話が講談社X文庫から発売となります。これがシリーズ1巻となる、『月の影 影の海(上)』(1992年6月)です。翌月には下巻が発売。

2001年までにX文庫から11冊発売されています。大人も楽しめるファンタジーということで、2000年より講談社文庫版も刊行されました。

2012年、新潮文庫へと移り、表現だけでなく、文章も大きく改稿された新装版が次々に発刊となります。このとき、『魔性の子』のエピソード0としてシリーズへ組み込まれました。

2013年、短編集『丕緒の鳥』が刊行。

2019年、待望の『白銀の墟 玄の月』が刊行され、話題になりました。というのも、「十二国記」シリーズでも人気の高い「戴極国」の続編だったからです。

「十二国記」の世界

『山海経』(中国の地理書ですが、神話的なストーリーも描かれた奇書)などをベースとした、中華風異世界ファンタジー小説です。

名前の通り、12の国があり、すべて王政です。重要なのは、「麒麟が天命を受けて王を選び、王は不老となって統治を行う」という天の定めがあること。そのため、王が居ることが大切で、王が居なければ災害や妖魔で国が荒れます。次の麒麟が生まれ、王を選ぶまで、国は荒れるしかないという不条理なシステムです。

また、王が道を誤ると(失道)、麒麟が病み、王も倒れます。国が落ち着くためには王の存在が最低条件なので、長く在位にあるほど国が栄えるというシステムです。

この作り込まれたシステムが物語を作り出しています。

また作品を通し、王とは、国とは、天とは、人とは……答えの出ない問いについて、登場人物が考えていくストーリーになります。

「十二国記」シリーズを簡単にまとめる

12の国のうち、作品のメインとして取り上げられた国(王と麒麟)は次の通りです。

慶国(王:陽子、麒麟:景麒)
雁国(王:尚隆、麒麟:延麒、六太)
恭国(王:珠晶、麒麟:供麒)
戴極国(王:不在→決定、麒麟:泰麒、蒿里)

他の国も出てきますが、メインストーリーとなっているのはこの4つの国になります。根底では繋がっているため、1巻から読んだ方がよいのですが、実は全巻読まなくても、国ごとに読むことができるシリーズになっています。

慶国 陽子が王となって、国を治める決意をする話
『月の影 影の海』(上・下 一旦完結)
『風の万里 黎明の空』(上・下 完結)

雁国 日本で国を失った尚隆が、雁国の王となる話
『東の海神 西の滄海』(完結)

恭国 12歳の珠晶が王になる決意をし、蓬山へ昇山(麒麟に目通り)する話
『図南の翼』(完結)

戴国(戴極国) このシリーズが一番長くなります。
『魔性の子』 日本を舞台にした泰麒(要)の話(一旦完結)
『風の海 迷宮の岸』 泰麒(おめでたい黒麒)の成長と、王の選定(一旦完結)
『黄昏の岸 暁の天』 王が行方知れずとなり、泰麒も日本へ。泰麒を呼び戻そうとする話。(続)
『白銀の墟 玄の月』 全4巻。『黄昏の岸 暁の天』の続編。行方知れずの王を探す話。(完結)

※『魔性の子』はかなり雰囲気が違いますので、『風の海 迷宮の岸』を読んでから、『魔性の子』を読んでも大丈夫です(読まなくてもシリーズを読むことは可能だと思います)。

短編集
『華胥の幽夢』『丕緒の鳥』

「十二国記」新作があれほど話題になった理由

シリーズ累計1000万部を突破している作品です。それだけ読者が多いということが理由の一つ。そして、前出の通り、他の国の話が完結している中、このシリーズだけが完結していなかったからというのも大きいと思います。

『黄昏の岸 暁の天』(2001年)では、行方知れずの王が、そのまま行方知れずで終わります。そして、日本から呼び戻すことに成功した泰麒も力を失っているという、とても悲観的な終わりだったのです。あれから18年、十二国記のファンは待ちました。待ちに待ったのです!

『白銀の墟 玄の月4巻』のAmazon評価が今ひとつの理由

作品としてはやはり素晴らしく、高い評価をつけている方もいらっしゃるのですが。

長年待っていたファンは、「これじゃない」感を持つ人も多かったように思います。
簡単にいえば、「思っていたのと違っていた」のです。

これまでの作品の多くは「王と麒麟の関係」、「どんな国を作るか」、「王とはなにか」、「人はどうあるべきか」などが描かれ、そこに一定の答えが出ていました。作者が作った「十二国記」のシステムの上で、それぞれが悩み、苦しみながらも、ときに助け合って「国」を作り、「国」を治め、「人」が前を向いて生きていく物語だったのです。

ところが今回は「天(むしろ十二国記のシステム)に対する疑問」というテーマで、これまでと作風が変わっていたように思います。システムの是非を問うというテーマは、これまでの作品にもちらほら顔を出しており、作者のインタビューを見ていても、「いつか大きく取り上げるだろうな」とファンは予想していました。ですから、このテーマについては一定の理解があったと思います。

しかし、このテーマを描くにあたって、あまりにも「王と麒麟」が薄かったことが、「これじゃない」感のもとではないかと思うのです。そして、重く冗長だった前半に比べ、4巻が書き急いだように纏められてしまった点も期待を裏切ったのではないかと思います。

とにかく、「王」があまりにも薄かった。びっくりするぐらい薄いのです。
十二国記ファンの多くは、戴国の「王と麒麟(と国)」の物語が完結するのを待っていたので。

・全ての伏線に答えが出ていないのでは?
・今後、国はどうなっていくの?
・裏切り者の扱いはそれでいいの?
・というか、その王で国は大丈夫?
・泰麒、大丈夫なの?

……というような、疑問が残ってしまいました。いままでのような、カタルシスがないと。

『魔性の子』から続く本作ですので、これまでになく暗く、重い作品であったことは大きな問題ではなかったと思います。泰麒の決断でテーマが締まったときにはぞくっとなりました。

でも、やっぱり「これじゃなかった」感は強いんです。4巻も使うのならば、もうちょっと書くべき内容があったのではないかと思ってしまいます。とくに後半、書いてほしかったところが書かれていなかったと思うんです。

せめて、もうちょっと「王」が立ち上がっていて、敵と対峙していたならば、こんな感想にはならなかったかなと思います。ただ、『魔性の子』から続く本作としては、「泰麒」が描いてあればそれでよいとすべきかもしれません(でもさすがに冗長かも)。

いろいろ書きましたが、戴国シリーズが完結して本当によかったと思います。