何冊売れたらベストセラー? 発行部数と実売部数とは

2019年12月15日

ベストセラーの定義は曖昧

一般的に10万部売れた本をベストセラーと言います。ただ、本に関わる人たちの目安が10万部であるだけで、そこまで売れていなくてもベストセラーと称する本はあるようです。

つまり、5万部でもベストセラーと称することはありますし、「年間ベストセラー」や「月間ベストセラー」というようによく売れた本に使うこともあります。

基本的には、「ベストセラー」=「売れている本」という認識で正しいと思います。

そもそも部数は極秘

実は、部数というのはあまり大っぴらにされません。何冊刷ったのかは、出版社や作家さんしか知りません。そして何冊売れたのか(実売部数)に関しては、作家にさえ明かさないケースが圧倒的に多いといわれています。

幻冬舎の騒動をご存じでしょうか?

簡単にまとめると、「幻冬舎社長の見城さんが、作家の津原泰水さんの実売部数をTwitterで暴露した」ということになります。これに対し、高橋源一郎さんや万城目学さんなど、著名な作家さんや評論家さんから次々に非難の声が上がり大きな問題になりました。

もうちょっと詳しい経緯を書くと、2018年の終わり頃、津原泰水さんが百田尚樹さんが書いた「日本国紀」を批判したことがはじまりです。その後、2019年になって、津原さんが「日本国紀」を批判したために文庫本が出版中止になったという内容をツイートします。これに対する、見城さんの一連のツイートが問題視されました。とくに、販売部数と実売部数を暴露した点を非難する作家さんは多かったように思います。

出版に携わる人たちが見城さんを批判したのは、「出版業界では実売部数が極秘事項だった」ことが大きな原因です。それほど、出版業界では「部数(とくに実売)を明かさない」のが一般的なのです。

出版という業界は特殊です。本の値段がどの書店でも一律になっているのは、「独占禁止法」の適用外となっているためです。文化、教育を支えるメディアであることが、適応外の理由となっています。

出版社が存続するためには「売れる本」が必要ですが、文化・芸術的な本が必ずしも「売れる」とは限りません。本や作家を守るためにも、利益追求のみを求めるわけにはいきません。発行部数等が秘密にされるのも、そのあたりが理由ではないかと考えられます。

つまり、「15万部突破のベストセラー」などのセールスがかかって、はじめて部数が分かります。

発行部数と実売部数がある!

簡単にいうと、「発行部数は印刷した冊数」で、「実売部数は実際に売れた冊数」となります。「15万部突破のベストセラー」の場合、15万部というのは発行部数であることが多いです。

発行部数や実売部数を知る方法

出版社が公表しない限り、正確な数値を知るすべはありません。

しかし、推定値を確認することは(一部)できます。

最も有名なのが、オリコンランキングです。このランキング上位は「推定売上部数」が記載されています。無料で見られる部分もありますが(10位まで)、基本は月額制の会員になる必要があります。毎月950円(税抜)を払うのはちょっと辛いですけれど。

しかし、ライトノベル・コミック中心の推定部数をチェックしているサイトさんがあったのですが、2019年7月をもって打ち切られています。過去のデータはありますので、気になる本があればどうぞ。書籍ランキングデータベースさんです。

また、オリコンで年間の推定売上部数を発表していることもありますので、これらを見ることでチェックすることができます。

2019年 ベストセラー小説

各本屋や電子書籍サイトで、年間ベストセラーが発表されています。
個人的には取次の中でシェアNo1である日販さんの年間ベストセラーが信頼度が高いと考えています。

単行本ベスト10 -2018/11/25~2019/11/23(日販調べ)-
1 そして、バトンは渡された 瀬尾まいこ
2 すぐ死ぬんだから 内館牧子
3 ノーサイド・ゲーム 池井戸潤
4 トラペジウム 高山一実
5 M愛すべき人がいて 小松成美
6 宝島 真藤順丈
7 希望の糸 東野圭吾
8 転生したらスライムだった件14 伏瀬
9 転生したらスライムだった件15 伏瀬
10 82年生まれ、キム・ジヨン チョ・ナムジュ

文庫本ベスト10 -2018/11/25~2019/11/23(日販調べ)-

1 小説天気の子 新海誠
2 白銀の墟玄の月(一・二) 小野不由美
3 蜜蜂と遠雷(上・下) 恩田陸
4 マスカレード・ホテル 東野圭吾
5 白銀の墟玄の月(三・四) 小野不由美
6 十二人の死にたい子どもたち 冲方丁
7 危険なビーナス 東野圭吾
8 絶唱 湊かなえ
9 コンビニ人間 村田沙耶香
10 罪の声 塩田武士

ランキングはこちらからチェックできます(HonyaClubを運営しているのは日販さんです)。

単行本1位 瀬尾まいこさん『そして、バトンは渡された』

「2019年本屋大賞」受賞作です。これは初版1万5000万部で、受賞を受けて29万部の重版、発行部数は42万部となったという発表がありました。

高校二年生の森宮優子。
生まれた時は水戸優子だった。その後、田中優子となり、泉ヶ原優子を経て、現在は森宮を名乗っている。
名付けた人物は近くにいないから、どういう思いでつけられた名前かはわからない。
継父継母がころころ変わるが、血の繋がっていない人ばかり。
「バトン」のようにして様々な両親の元を渡り歩いた優子だが、親との関係に悩むこともグレることもなく、どこでも幸せだった。

さいごに

ベストセラーとは、一般に10万部売れた本を言います。しかし、それ以下でもベストセラーと言われることもあるので、「ベストセラー」=「売れている本」でいいと思います。

「直木賞」や「本屋大賞」に選ばれた本は、ほぼベストセラーになっていると考えられます。

ちなみに、10万部売れた場合の印税ですが……

1冊1500円とすると、印税は10%といわれていますので、150円×10万となり、「印税は1500万円」となります。ここまでくると、確かにベストセラーというべきですね!