文豪ストレイドッグス【文スト】考察! 実在の文豪との違い

2019年12月18日

人気漫画『文豪ストレイドッグス』には、実在した文豪がたくさん出てきます。文豪が異能を持って戦うという、謎設定の漫画ですが、「異能」が文豪の作品をモチーフにしているところがおもしろいです。ただ、実在した人物がかなり好き勝手に拡張されているため賛否両論のあるマンガです。細かいことにこだわらない本読みさんにおすすめする作品です。

ちなみに、実在の文豪を知っているとくすりと笑えたり、逆に違和感があったりします。この実在の設定が使われている点や違和感を感じる点を見つけて、「ふふん。私は真実(らしきもの)を知っている!」と悦に入るのが、読書家の正しい読み方だと、思っています。
今回は、「違和感」について、簡単にまとめていきたいと思います。

文豪さんの時代がわかるように、表にまとめてみました。

文豪さんたちの関係がわかりやすいように、図にまとめてみました。

図が見にくい場合は、ズームをかけるか、PCなら右クリックして「画像を新しいタブで開く」を選択してください。

史実との違和感

太宰さんと芥川さんは、設定が完全に逆ですから!

文ストにはたくさんの文豪さんが出てきて、それぞれに関係を築いています。では、実際の文豪たちはあんな関係を気付いていたかというと……そもそも生まれがけっこう違うんですよ。太宰さんと国木田さんなんて、「マンガでは喧嘩するほど仲がいい」を体現した同僚で友人ですが、そもそも生きていた時代が重なっていませんからね!

実は、太宰さんと芥川さんの関係性はまったく逆なんです。
図の黄色でマークした、太宰さん、中島さん、芥川さん、中也さんを見てみましょう。実際には、太宰さんと中島さんが同じ年で、中也さんが二つ上、芥川さんはもっと年上なんです。

文豪ストレイドッグスでは→実際のところは
・芥川さんが太宰さんにあこがれている。
 →(実際には)太宰さんが芥川さんにあこがれていた。

・太宰さんが芥川さんを育てた。
 →(実際には)太宰さんは芥川賞がほしくてしょうがなかった

・中也さんと太宰さんが幹部仲間で、芥川さんはその下。
 →(実際に)中也さんと太宰さんが同世代なのは事実。
 →(実際には)芥川さんはもっと上。年も立場も上。

・国木田さんと太宰さんは仲良しの同僚兼友達。
 →(実際には)国木田さんと太宰さんは時代が重なっていない。

もし、文スト中で太宰さんと芥川さんが逆だったら
○太宰さん(ポートマフィア)が、芥川さん(マフィア→武装探偵社)に執着する。
○国木田さんとは年が離れているが、乱歩さん、谷崎さん、賢治さんとは年が近くなる。
芥川さんと中島さんの師弟関係っぽい年齢差も飲み込める。
○ポートマフィア内で、太宰さんと中也さんは喧嘩する。

丸く収まる気はします。中也さんと太宰さんについては、マンガ内での、中也さん(ポートマフィア)対太宰さん(武装探偵社)でも成り立つ関係ですが、ともにポートマフィア内にいても問題ないかなと思います。また、太宰さんと中也さんは酒の席で決裂、微妙な関係だったことが知られていますが、この設定も問題なく使えます。
中也の幹部入りが遅れるような気はしますが、芥川さんのもと、太宰さんと中也さんが幹部目指してコンビを組んでいたというのはありかなぁと。

個人的に、『文豪ストレイドッグス』の中で、一番違和感を感じるのが芥川さんと太宰さんの関係なので、逆にしても別によかったのでは?と思わずにはいられません。作品を批判する意図はありませんが、読む度にこの二人だけは引っかかるんです。太宰さんと中也さんの関係がすんなり飲み込めてしまうのでなおさら。

江戸川乱歩さんとエドガー・アラン・ポオさんも逆

主人公が属する武装探偵社に江戸川乱歩さんが、敵対する外国の組織(ギルド)に「エドガー・アラン・ポオ」さんがいるんです。が、あきらかにポオさんが、乱歩さんに負けている! しかも本人がそれを認めてしまっている!

江戸川乱歩さんのペンネームが、ポオさんからきているというのは有名な話です。むしろ乱歩さんのほうが、ポオさんをリスペクトしていたはずなんです。なんで逆になっているのかと、突っ込みたくなるところなんですが、「文ストの乱歩さんはチートキャラなので、なんでもありだよな」とあきらめるしかないです。

ちなみに、ポオさんは1809年~1849年なので、乱歩さんよりも約85才ほど上になります。

谷崎さんが危ない関係だったのは、妹じゃなくて義妹

「文スト」中で、谷崎潤一郎さんにはちょっとあやしい関係の妹(ナオミさん)がいます。文スト中では実の妹となっているわけですが、実際には義理の妹が正しいです。

谷崎さんは妻・千代さんの妹であるせい子さんを好きになってしまいます。そのせいで、千代さんとの仲は拗れ、友人の佐藤春夫さんが入ってきて、三角関係に。三角関係が重なって、捻れて大変ですね。

義理の妹もスキャンダラスですが、実の妹って!

ちなみに、文ストのナオミさんのモデルは、『痴人の愛』という小説のナオミさんだと考えられます(ついでに、「文ストの谷崎さんとナオミさんの関係」は、この小説をモデルにしていると思われます。『痴人の愛』は真面目な男が少女に翻弄される話です)。そして、このナオミのモデルは義妹のせい子さんと言われています。構造的な関係がちょっとおもしろいです。文ストのナオミさんは、『痴人の愛」と義妹のせい子さんを足して作られたキャラクタだと考えてよさそうですね。

尾崎さんと鏡花さんと、それから樋口さん

尾崎紅葉さんと泉鏡花さんが「女性」化しています。名前が女性っぽいからでしょうか。それとも作風? また、同年代の樋口一葉さんもご出演。全員まずはポートマフィアとしてのご出演。
尾崎さん:マフィア幹部
鏡花さん:尾崎さんの弟子、刺客として探偵社へ。探偵社へ移動。
確かに鏡花さんは尾崎さんの弟子ですが……なぜ女性に。女性が少ないので仕方ないんだとは思います。

個人的には、二人が女性化していることよりも、樋口さんが芥川の部下で、芥川をものすごく慕っている(むしろ好き)なのが違和感ありまくりです。尾崎紅葉さんこそ、樋口さん時代の有名作家です(二人に面識はなかったようですが)。尾崎さんに憧れている設定のほうが違和感はないかなと思います。

まとめ

キャラクタの性格までいいだすときりがないので、とくに気になる点を4つ。

文豪へのリスペクトがないと一部から批判されている本作ですが、個人的には「文豪作品を知らない人たちが、文豪に興味を持つ切っ掛け」になると思うのです。実際、文ストキャラにした文豪の小説が売り出され、話題になりました。

かといって、批判をしている人たちの気持ちも、まったくわからないわけではありません。文豪の「擬人化」マンガなので、人物とその著作からおいしい設定だけ使ったり、実際の文豪を無視したりした、キャラクター設定になっています。

はじめにいったとおり、細かいことを気にしない読者さんにオススメの作品です。