文豪をモチーフにしたおすすめマンガ!
文豪のマンガといえば、『文豪ストレイドッグス』が有名ですが、それ以外にも文豪を描いた作品はいくつかあります。今回はより史実に近い文豪マンガや、史実をモチーフにした作品、それから作品から発想を得たマンガなど、文豪ストレイドッグスとは違う作品を集めてみました。
まずは、木曜会を描いた作品を2つ!
木曜会とは? 漱石を慕う若手文士や教え子たちが集まり、交流したサロンのようなもの。漱石が木曜日を面会日と定めたため、毎週木曜に人々が集まったことがこの名の由来。
先生と僕‐夏目漱石を囲む人々‐ 香日ゆらさん
登場人物:夏目漱石とその友人、木曜会メンバー
作品メモ:コメディ、4コマ
夏目漱石とその友人、門下とのユーモラスな日々を描いた作品。実際に残された資料を元に描いているため、文学ファン、歴史ファンにとっては資料的価値のある漫画にもなっています。史実から浮かび上がる漱石の愛すべき人柄や、芥川龍之介に代表される漱石門下の青春の日々、漱石と子規の友情など、現代ではあまり見られない濃い人間関係を独自の視点で描いています。フフフと笑えてほんの少し涙する、そんな文学的4コマワールドです。
史実をもとにした夏目漱石の4コマ漫画。漱石を囲む(友人、木曜会メンバーなど)がディフォルメされたキャラクタでこれでもかと出てきます!
とにかくおもしろいです。コミカルな四コマ漫画に、プチトリビアがついています。漱石時代の文士に詳しくなれますよ!
名前しか知らなかった寺田寅彦の造形が愉快です。11歳差がありますし、漱石の教え子なんですが、友人であり、兄弟のような関係がよいです。それほど仲が良いのに、木曜会メンバーにはあまり知られていなかったというエピソードもおもしろい!(「みんな来るなら、自分は別の日に来ますね!」って感じで、木曜には滅多にいかなかったとか。漱石を愛しすぎています)
或る日、木曜会で。 寺島らてさん
登場人物:内田百閒、芥川龍之介、夏目漱石、久米正雄など
作品メモ:穏やか、若手文士の交流、漱石先生は文豪然、2巻完結
大正四年。文豪・夏目漱石宅「漱石山房」には、彼を慕う若者達が頻繁に集うようになっていた。「木曜日に集まるから、木曜会」、そんな若者達が織り成す青春微炭酸物語、始まります。
内田百閒がここまで取り上げられるとは! 最初はそこでびっくりしたのですが……。
「木曜会」に集まる文士たちの交流。まだ学生だった芥川(1話ではじめて木曜会を訪れる)と木曜会文士メンバーとの交流が描かれます。淡々と進んでいくので、盛り上がりには欠けるのですが、ユーモアに満ちた作品で、安心して読めます。
芥川は木曜会メンバーの中では新参者の若手という立ち位置なので、繊細でかわいい感じに描かれています。漱石先生にも文士たちにも可愛がられています。ただ、文士の集まりなのですから、和やかで楽しいだけでは終わりませんけど。
文豪然とした夏目先生やかわいらしい芥川もよいですが、ひょうひょうとした内田百閒の人物像がとくにいいなぁと思います。
最果てにサーカス 月子さん
登場人物:中原中也 小林秀雄
作品メモ:シリアス、少女漫画的、三角関係、エリートと天才、3巻完結
大正十四年(一九二五年)、桜舞う春に作家を志す23歳の文学青年・小林秀雄は上京してきたばかりのまだ18歳の詩人・中原中也と運命的に出会う。
自意識の殻に閉じこもり、創作の迷路に入っていた秀雄に衝撃を与えて、彼の生きざまを根っこから変えていく中也…そして中也には同棲する一人の女・長谷川泰子がいた–
中原中也、小林秀雄、長谷川泰子の三角関係(史実)をもとに描いたフィクションです。中原の恋人だった長谷川が、小林のもとへ去ったというのは史実です。これで小林と中原の仲が拗れるかと思いきや(まったくなにもなかったわけでもないでしょうが)、三人の関係はその後も続いていきます。
本作は、三角関係を描きながら、むしろ小林秀雄と中原中也に焦点を当てた作品になっています。誰からも認められていたエリートでありながら自作(小説)を諦めている小林と、暴力的なまでに奔放で、天才の中原中也。二人の対比が描かれていきます。作中に用いられている中也の詩や世界観も美しいです。
全3巻。第一部完となっていますが、打ち切りです。本来なら第1巻に戻るラストになるはずだったことから、第一部完で締められています。切りの良いところで終わっていますが、どんどん面白くなってきたところだったので残念です。
作家ではなく評論家として有名になったため、小林秀雄は名前だけが有名で、功績はあまり知られていないかもしれません。超のつくエリートで、切れ者です。
小林秀雄は文芸評論家、編集者、作家の顔をもち、文学史に残した功績はたいへん大きなものです。冴え渡った文芸評論の素晴らしさはだれもが認めるものですし、編集者としても昭和8年には川端康成らと『文學界』を創刊し、昭和23年に創元社取締役に就任しています。また、一高、東大を卒業し、明治大学教授となったエリートです。
中原中也は、いわずとしれた『汚れつちまつた悲しみに』で有名な天才詩人です。タイトルのサーカスは、これも中也の有名な詩『サーカス』からきていると思います。
えへん、龍之介。 松田奈緒子さん
登場人物:芥川龍之介、室生犀星、荻原朔太郎、菊池寛など
作品:穏やか、芥川がかわいらしい、文士の交流、1巻完結
恋に仕事に人生に、大正文豪も忙しいのだ!! ――“僕たちはただ百年残る言葉を探しているのだ そのために今 生きているのだ”文壇のスーパースター、芥川龍之介。緻密に入念に作品を彫琢する一方で、女の罠にコロリとはまってしまう偏屈でハンサムな愛すべき男の素顔とは……?
作中に出てくる「僕たちはただ百年残る言葉を探しているのだ」の言葉が響きます!
偏屈なイメージのある芥川が覆ります。出てくるキャラクターが魅力的です。面白いのですが、様々なエピソードが1巻に詰め込まれた形になっているので盛り上がりに欠けます。文士同士の交流、脇役のエピソード、芥川と女性、震災、家族……1巻でまとめるには多すぎるんです。もっと長く、濃く、描いて欲しかった。
最初はわりと明るい感じで入っていくのですが、やはり文豪譚。どんどん重苦しくなっていきます。とくに大正12年の関東大震災以降は重たいです。
一高、東大出のエリートで、人嫌いで、冷たいイケメンな芥川ではなく、不器用で、かわいらしい芥川が見られます。また、芥川の経歴や態度(漱石先生に可愛がられていたことも含め)から、周囲が芥川像を作り出してしまった様子もうかがえます。
マンガの作者は「重版出来」の松田奈緒子さん。芥川への愛情から書かれた作品だなぁと思います。
エコール・ド・プラトーン 永美太郎さん
登場人物:川口松太郎、直木三十五、小山内薫など
作品メモ:第1回直木賞作家と直木三十五の出会い、大阪が舞台、文士だけでなく芸術家も
川口松太郎 23才、直木三十五 32才、芥川龍之介 31才、菊池寛 34才、谷崎潤一郎 37才、小山内薫 42才。『文藝春秋』創刊の年、若き文人らの眩き軌跡――一九二三年(大正十二年)九月一日、未曾有の大地震が関東一円を襲う。死者十万五千人、家屋全壊訳十万九千、全焼二十万二千余棟…出版社や本屋が集中していた神田周辺も壊滅的な被害を受けた。失われた書籍は数百万冊にのぼり、この年に創刊された『文藝春秋』もその例外ではなかった。一方『大大阪』の呼称で親しまれ、当時人口で東京を凌駕していた大阪は、モダニズム文化が花開いていた。
川口松太郎は第1回直木賞を受賞した作家です。直木三十五は直木賞の名で有名ですが、実際に作品を読んだ人はどれくらいいるんでしょうか。松太郎が頼った人物が劇作家の小山内薫です。この方も一般的に知られた方ではないかと。というように、どちらかといえばあまり一般に知られていない作家(劇作家)に焦点を当てた作品になります。
震災後に、川口松太郎が大阪に流れてきたところから始まるので、あまり知られていない時代、背景にスポットを当てた価値ある作品だと思います。まだ1巻までしか発売されていないので、これからどうなっていくのかとても楽しみです。
キャラクター(直木三十五や岡本かの子)がかっとんでいますし、絵に癖があるので、好きな人が好きだろうし、苦手な人は苦手かもしれません。
月に吠えらんねえ 清家雪子
登場人物:朔くん(荻原朔太郎)、白さん(北原白秋)、犀くん(室生犀星)など多数
作品メモ:文豪作品からの擬人化、暗い、詩の抽象概念を漫画化
第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門・新人賞を受賞!
□(シカク:詩歌句)街。そこは近代日本ぽくも幻想の、詩人たちが住まう架空の街。そこには萩原朔太郎、北原白秋、三好達治、室生犀星、高村光太郎らの作品からイメージされたキャラクターたちが、創作者としての業と人間としての幸せに人生を引き裂かれながら詩作に邁進する。実在した詩人の自伝ではなく、萩原朔太郎や北原白秋らの作品から受けた印象をキャラクターとして創作された、詩人たちと近代日本の業と罪と狂気の物語。
文豪を描いた作品ではなく、詩人や俳人の作品から受けた印象でキャラクターを創作してあります。かなりグロい描写もありますし、登場人物は狂気に取り憑かれています。朔くんの人格は崩壊気味ですし、白さんも不気味です。旅に出ると消えた犀を探すという流れはあるのですが、物語はあっちいき、こっちいきして、どんどんと世界の深みに向かっていきます。
作品から擬人化したキャラクターということになっていますが、実在の詩人たちのエッセンスも混じっています。ファンタジー世界である□街が幻想と混沌と狂気の世界なので、かなり人を選ぶ作品だと思います。好きな方はどハマりすると思いますし、苦手な人は精神を抉られるかもしれません。退廃とか、精神不安定とかが苦手な人や、想像力が豊かすぎる人は避けたほうが無難かもしれません。天才の見る狂気の世界が広がっていきます。狂気が甘露な人や、アウトプットして昇華できる人にしかオススメできない作品です。
盗んだバイクで走り出したチューヤくんが普通に見えてほっとしたところからはじまるのですが、その直後から一気にきます。まずは試し読みを!
まとめ
文豪をとりあげた作品って、思ったよりも少ないですね。文豪作品のマンガ化はたくさんあるのですが。
個人的には木曜会をとりあげた二作が好きです。漱石先生と愉快な仲間たちが描かれています。文豪さんたちが集まって、サロンのようなものを開いていたというのは、古き良き時代といった感じで興味深いです。想像以上に関係性が深いのだなと思いました。
どれも面白い作品なのですが、あまり長く続かないのが残念。「最果てのサーカス」はこれからおもしろくなってきそうでしたし(切りのいいところまできていますけど)、「えへん、龍之介。」はもっとゆっくり、じっくり読みたかったなと思います。龍之介さんのほうは、よくぞここで止めてくれたというラストなので、中身のほうをもっと引き延ばして、もっと掘り下げた作品が読みたかったです。雰囲気のある作品でとてもよかったのに。





