サイモン・シン『フェルマーの最終定理』のススメ!

『フェルマーの最終定理』で一気に有名になったサイモン・シンさんですが、経歴がすごいです。ケンブリッジ大学大学院で素粒子物理学の博士号を取得、ジュネーブの研究センターに勤務後、イギリスのテレビ局BBCに転職しています。素粒子物理の博士号って……。

『暗号解読』や『宇宙創成』などベストセラーを飛ばしています。小説ではなく、科学書ではあるのですが、ものすごくドラマチックなノンフィクションという感じで、小説読みさんもはまるはず!

今回は『フェルマーの最終定理』から、フェルマーと、最終定理についてご紹介します!

フェルマーとは?

ピエール・ド・フェルマーは(1607~1665年)、17世紀のフランスに生まれた数学者です。「数論の父」とも言われますが、本職は役人。そのうえ法律の専門家で、裁判所での仕事も持っていました。

このフェルマーさん、小説の主人公といってもいいくらいキャラクターの立った人です。

人を困らせる悪癖があったようで、「我思う、故に我在り」のルネ・デカルト(哲学者で数学者)などをイライラさせていたらしいです。どうも、「この論は正しい! ふふふ、君はわかるかな?」という思わせぶりに手紙を送っては、答えを教えずにいたとか。悪戯好き(といっていいのか迷いますが)な一面があったようです。

フェルマーと48の命題

フェルマーさんは仕事の傍ら、趣味で数学の研究に取り組んでいました。彼の愛読書は、古代ギリシャの数学者ディオファントスが書いた『算術』という本です。フェルマーはその余白に思いついた数学の定理(この時点では定理とは呼べない)を書き込みをしていくのです。

実は定理というのはそれが正しく証明されていなければなりません。そのため、フェルマーが書き込んでいたのは「命題」または「書き込み」とよぶべきものです。命題を証明するための概略が書き込まれている場合もあったようですが、最後まで証明されずに放り出されています。フェルマーが亡くなったあと、彼の息子によって48個の書き込みが纏められています。全てが数学的に有用だったわけではありませんが、フェルマーの48の命題として有名になりました。

フェルマーの最終定理とは?

48の命題のうち、最後まで残ったものをいいます。「算術」の問題8の余白に書かれたもので、48の命題のうち2番目のものになります。48個のうち、47個は証明または反証がどんどん与えられていったのですが、最後の一つだけが300年以上も解かれずに残っていました。

私はこの命題の真に驚くべき証明を持っているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない

様々な小説に引用されている有名な言葉です! フェルマーは最終命題を解き明かした!と考えていたようですが、17世紀の数学では証明できないレベルだったそうです。

この命題が、有名になったのはもちろん長きにわたって証明されなかったからですが、加えて、理解するだけならおそろしく簡単だったからです。

先に、ピュタゴラス(ピタゴラス)の方程式について説明します。
ピュタゴラスの方程式

x2+y2=z2

ピュタゴラス方程式といわれるとわかりにくいですが、生徒時代に習った三平方の定理(ピュタゴラスの定理)です。これを満たすx、y、zが全て自然数のものをピュタゴラス数といいます。このピュタゴラス数は無限にあることがわかっています。たとえば、(3、4、5)や(5、12、13)がそれです。

しかし、この2乗を3乗にすると、これを満たす3つの数を探すことが困難になってしまいます。というか、ないのです!

x3+y3=z3

では、4乗では? x4+y4=z4
では、n乗では? xn+yn=zn

つまりフェルマーの最終定理とは、

ある3乗数を2つの3乗数の話で表すこと、あるいは4乗数を2つの4乗数の和で表すこと、および一般に、2乗よりも大きいべきの数を同じべきの2つの数の和で表すことは不可能である。

というものです。ちなみに、「べき」というのは指数(乗)のことです。

xn+yn=zn(ただしnは3以上の自然数)

と簡単に書き表すことができます。

フェルマーの最終定理を解いたのは?

アンドリュー・ワイルズさんです。1995年のことです。フェルマーの問題提起から、約360年後だとされています。

10歳のときにフェルマーの最終定理と出会い、数学者を志します。なんでも、17世紀の数学者が作り出したものだから、20世紀の僕が解けないことはない!と思ったとか。天才はやっぱりすごいです。

サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』とは?

サイモン・シンさんによる、ワイルズを中心としたフェルマーの最終定理が解き明かされるまでをまとめた本です。数学史やフェルマーについても丁寧にまとめられており、数学に興味がある人以外にもおすすめできる作品です。

確かに、「数学」がところどころに出てきますが、基本的には義務教育(または高校レベル)の数学で理解できる内容になっています。本当に難しい部分はスルーできるように、細心の注意が払われている本です。
とくに数学が得意というわけでもない私でも、どうにかついて行けるようになっていました。

前半は数学史が丁寧に説明されています。これによって読者もフェルマーの最終定理に魅入られたところで、それが解き明かされるまでの物語が描かれていきます。

とにかくわかりやすく、おもしろいです!

参考 「フェルマーの最終定理」サイモン・シン、青木薫訳