読まず嫌いはよくない! 読書家に読んでほしい人気ライトノベル ベスト5

2020年12月18日

ライトノベル、食わず嫌いはよくない!

ライトノベルが合わない!という読書家さんは多いのでは。一般小説ばかり読んでいると、ライトノベルのいろいろが許せなくなるかもしれません。
「ご都合主義だし、テンプレ的でつまらない」
「登場人物がありえないし、安っぽい」
「文章がなぁ……」

否定はしません! 一般小説がこれらに当てはまったとき、「ラノベじゃねえか」と揶揄する本読みさんがいるのも事実。これ、ライトノベル好きな読者さんがめちゃくちゃ怒るやつです。しかし、そのジャンルって売れ筋なんですよ。ライト文芸とか、キャラ文芸といわれる表紙にイラストが書かれたライトノベル風一般小説が売れています!

ライト文芸についてはまた今度。まずはライトノベルからご紹介したいと思います。「サクラダリセット」や「GOSICK」のような、一般レーベルの文庫からも刊行されるような作品は外しました。ライトノベルらしいライトノベルを厳選しています。

実際のところ、私もライトノベルは読まなかったんです。上記3つのすべてに当てはまるものも多かったので。ですが、すすめられて読んだら、「あれ、おもしろい」となりました。確かに、(文章はお上手な作品が増えたように思いますが)登場人物がありえなかったり、ご都合主義だったり、頭の固い大人なので「ついていけん」的な部分もあるんです。ライトノベルのお約束は外していないんですから。

では、なにが凄いかといえば。おもしろいライトノベルというのは、驚くような「武器」を持っています。ストーリー展開力とか、シリーズ構成力とか、目の付け所とか。
お子さんが、お孫さんが、お友達が! ラノベを読んでいませんか? 食わず嫌いはよくないと思います。「萌え」だけではない、鋭い「武器」を持った作品をご紹介します。

これだけは読みたい! おすすめライトノベル5選

本好きの下克上 (TOブックス)/香月美夜さん

本好きのための、本好きに捧ぐ、ビブリア・ファンタジー!
とある女子大生が転生したのは、識字率が低くて本が少ない世界の兵士の娘。いくら読みたくても周りに本なんてあるはずない。本がないならどうする?作ってしまえばいいじゃない!目指すは図書館司書!本に囲まれて生きるため、本を作るところから始めよう!

読書家のためのライトノベルです。文庫ではなくソフトカバーでの刊行。
異世界で子どもに転生した主人公、本が好きで好きで好きでたまらないために、おそろしい執念で本を手に入れようとします。転生先は中世ヨーロッパ風の世界。本が高価なら、作ってしまえばいいじゃない! 現代の知識を使って是が非でも「本」を入れようと頑張る主人公。じわじわ面白くなります。多少、中だるみしますが、巻が進んでも面白さが落ちてこない。むしろどんどん面白くなっていきます。ただ、後半にいくほど主人公の傲慢さが目立つようになっていくので、謙虚なキャラがお好きな方にはおススメできないかも。

アニメ化、マンガ化もされていて、中高校生にも大人気です。でも、大人でもはまる面白さ。変人レベルで本が好きな主人公の造形現代知識を異世界で使うやり方、「本」をメインに展開する「異世界本作り」の成り上がりストーリー。1巻の前半は展開が遅く感じて、慣れないライトノベルに戸惑う方もいらっしゃるかもしれませんが、どんどん面白くなります。
「なろう発」なので、なろうサイトさんで読むこともできますよ! お試しください。

狼と香辛料(電撃文庫)/支倉凍砂さん

行商人ロレンスは、麦の束に埋もれ馬車の荷台で眠る少女を見つける。少女は狼の耳と尻尾を有した美しい娘で、自らを豊作を司る神ホロと名乗った。「わっちは神と呼ばれていたがよ。わっちゃあホロ以外の何者でもない」老獪な話術を巧みに操るホロに翻弄されるロレンス。しかし彼女が本当に豊穣の狼神なのか半信半疑ながらも、ホロと共に旅をすることを了承した。そんな二人旅に思いがけない儲け話が舞い込んでくる。近い将来、ある銀貨が値上がりするという噂。疑いながらもロレンスはその儲け話に乗るのだが―。

中世ヨーロッパ風のファンタジー小説。児童書のようでもあり経済要素あり謎解き要素あり。見た目はライトノベル、中身は違う何か(複数)といった感じです。世界観がほんとうにしっかりしていて隙がないです。そして、文章が上手いです。分かりやすく、丁寧で、冗長すぎない。描写力があるのでするりと世界に入ってしまいます。それが世界観にとても合っています。

行商人のロレンスと知識は豊富なホロ。商人でお人好しなロレンスも魅力的ですし、なんといってもホロがかわいい。ライトノベルでは軽視されがちな「経済」がしっかり描かれています。また、二人が巻き込まれる騒動とその解決も鮮やかで楽しいです。

Re:ゼロから始める異世界生活(MF文庫)/長月達平さん

コンビニ帰りに突如、異世界に召喚された高校生・菜月昴。これは流行りの異世界召喚か!? しかし召喚者はおらず、物盗りに襲われ早々に訪れる命の危機。そんな彼を救ったのは、謎の銀髪美少女と猫精霊だった。恩を返す名目でスバルは少女の物探しに協力する。だが、ようやくその手がかりが掴めた時、スバルと少女は何者かに襲撃され命を落とした――筈が、スバルは気づくと初めて異世界召喚された場所にいた。
「死に戻り」――無力な少年が手にしたのは、死して時間を巻き戻す唯一の能力。

「リゼロ」の名で知られる「なろう」発の小説です。すすめられて読んだのですが、一度は1巻でギブアップしました。よく纏まっているし、文章も読みやすかったのですが、いかんせん「ご都合主義」「テンプレート」という印象で、目新しいものがなかったのです。「死に戻り」という設定も、タイムリープと思えば面白い作品は大量にあります。もう読まない!といったら、「違うんだ、3巻とか4巻くらいで傑作だと気づくんだ」といわれ、読みました……おもしろかったです。

なにがおもしろかったかというと、「伏線のすごさ」と「展開の上手さ」です。読書慣れしているほうが「伏線」に気づきやすいんですが、それさえも裏切られることがあります。そう考えると、1巻も伏線や展開(読者に展開を推理させる)は非凡だったのかもと感じました。
「THE ライトノベル」という作風ですので、どうしても合わない読者さんはいらっしゃると思います。しかし、本を読み慣れている人のほうがおもしろく感じる作品です。

ソードアート・オンライン(電撃文庫)/川原礫さん

クリアするまで脱出不可能、ゲームオーバーは本当の“死”を意味する──。謎の次世代MMO『ソードアート・オンライン(SAO)』の“真実”を知らずログインした約一万人のユーザーと共に、その過酷なデスバトルは幕を開けた。SAOに参加した一人である主人公・キリトは、いち早くこのMMOの“真実”を受け入れる。果たして、キリトはこのゲームから抜け出すことができるのか。

2017年年、シリーズ累計発行部数が国内1300万部と発表されました。ライトノベルのモンスターです。
ゲーム世界にフルダイブする(装置をつけて眠り、バーチャルな世界に入り込む)という設定について行けなければ、読まないほうがいいです。ゲームに抵抗感がない人は、はまると思います!

私、ゲーマーでもあったので「きっと面白い!」と思って読み始めたのですが、実は1巻で挫折しかかりました(リゼロのときのデジャブ……いや、こっちのほうが先に読んだんですけど)。なにがだめだったかというと、1巻では「ゲームから抜け出るためには、ゲームをクリアしなくてはならない」のです。ボスは最上階の100階にいるとされています。主人公たちはそこを目指して、一層ごとにクリアしていくのですが……(新人賞に出すために)登っていく間がすべて吹っ飛びます。ネタバレしそうなので、詳しくは書かないのですが……大事なところが抜け落ちている気がする!とそっと本を置きました。
そして、再度すすめられたわけです。「違うんだ。1巻で足りない部分はちゃんと2巻で補完されているから!」と。「その後は、また面白くなるから」と。はい、確かに面白かったです。

このゲームにフルダイブするという設定が、非常にうまく使われた作品です。設定の新しさと、その使い方が秀逸。ストーリーがぐいぐい引っ張られていきます。

オーバーロード(エンターブレイン)/丸山くがねさん

その日、一大ブームを起こしたオンラインゲーム、“ユグドラシル”は静かにサービス終了を迎えるはずだった。―しかし、終了時間をすぎてもログアウトしないゲーム。意思を持ち始めたノンプレイヤーキャラクター。なにやらギルドごと、異世界に飛ばされてしまったらしい…。現実世界ではゲーム好きの孤独でさえない青年が、骸骨の見た目を持つ、最強の大魔法使い“モモンガ”となる。彼が率いるギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の伝説が、いま始まる!

こちらも「なろう」発。ソフトカバーで、表紙絵が絵画風なのがポイント。だって、大人向けですもの。でも、中・高校生も楽しめます。ゲームが苦手な人は入り口で躓くかもしれませんが、基本はファンタジー小説なので入り込めれば大丈夫かと。

この小説のおもしろい点は、「主人公が悪役(魔王)」であること。悪役側から描かれた、ファンタジー世界の戦いです。残虐非道なこともやるのですが、完全なる悪役ではないところがよいです。主人公はもともと温厚で、ちょっと気の弱いキャラクターなので、嫌いになれないんですよね。感情移入すればするほど、敵方(普段は主人公側)への見方が変わってきます。

「なろう」発ですが、web版と書籍版で大幅な改稿が加えられています。話の筋さえ変わっているくらいで。アンチヒーロー小説としておすすめです。

それ以外でオススメしたかった本

『幼女戦記』カルロ・ゼンさん(エンターブレイン)

タイトルからして読む気になれなかった作品。ところが、これもまた面白いんです。一部では幼女萌えとかいわれていますが、面白い点はそこではない!

エリートサラリーマンだった主人公が、大戦中のヨーロッパ風国家へ転生します。記憶を維持したままだった主人公は、成り上がりを目論むのですが、最前線に送り込まれることに! という感じです。戦争で少女(9歳で将校)が大活躍するという、ちょっとどうかという設定なんですが(いくら中身が三十代男だとしても)。戦闘部分もしっかり書き込まれていて、空戦の描写はとくに印象深いです。
で、なにがおもしろいかというと、この本「コメディ小説」なんです。ちょっとブラック入ったほうのコメディ。本人の思惑があわれなほどに裏目にでてしまうんですが、主人公が合理主義でかわいくない性格なので、いわゆる「ザマァ」的な要素もあります。はまる人ははまる作品だと思います。

『グランクレスト戦記』水野良さん(富士見ファンタジア文庫)

『ロードス島戦記』の作者が描く、新たな物語。安定の面白さです。全10巻で完結している点もおすすめポイント。本当はこれもベスト5に入れたかったんですが、昨今の「ライトノベル」的かというとそうではないので外しました。『ロードス島戦記』ファンを裏切らないファンタジー戦記。

ライトノベルを普段読み慣れていない人でも、ついついはまってしまう作品を集めました。どれもメジャー級の作品ばかりなので、ライトノベル好きさんは必ず知っていると思います! おすすめを聞いてみるのもいいし、読んで語ってみるのもいいですね。