AIで書いた小説が新人賞を受賞/AIで小説は書けるか?

2026年1月8日小説投稿と通過

遅かれ早かれくるだろうと思っていました。今回はネットの小説の賞なので、一般文芸の方たちは「でもなろう系でしょ?」と思っている方も多いのではないかと思います。ただ、第12回星新一賞の最終候補作にもAIで8割書いたという作品が入っているので、一般文芸だから安泰とはいえません。

今回、私もいくつかのAIを使って小説を書かせてみたので、その感想もふくめて今回の件についてまとめておこうと思います。

AIで書いた小説が新人賞を受賞

アルファポリスが開催した「第18回ファンタジー小説大賞」を受賞しました。

作品タイトルは「地味スキル《お片付け》は最強です!〜社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?〜」

【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更(後出し)で書籍化&コミカライズ「確約」が「白紙」になりました。】

とのことです。後出しで規約変更があったことは事実のようで、Yahoo!に記事が上がっていました。記事が期限切れになる可能性もあるので、該当部分を引用しておきます。

当初AI生成作品に関する記述がなかった。しかしアルファポリスは11月18日、全コンテストでのAI生成作品の参加禁止を発表した。同社は「作品の大部分において文章の作成を主目的として生成AIツールを利用して作られた作品」を禁止対象と定義。プロットの検討や文章の校正など補助的な利用は対象外としつつも、応募規約に受賞および出版化は取りやめになる旨を記載した。

後出しの是非はさておき、作品を前半部分のみ拝読しました。内容に関してはよくあるなろう系ですが(不遇スキルだと思っていたら、使えるスキルだったというはじまりです)、とても読みやすいです。

AIに書かせたといわれたら納得な部分もあります。具体的にいうと、一文が短めで、体言止めを使ってリズムを作っている点です。これ、自分がAIを使って書かせたときと似ているなと思いました。

Web小説としてみれば文章は読みやすく、うまいです。おそらく多くのWeb系の作家さんと比べてもうまいほうだと思います。編集的な目でみれば「直しがなくてもいけそう」な印象を持ちました。

AI創作の是非

私の個人的な所感ですが、是の部分も、非の部分もあります。

私はAI創作はありと思っているほうですが、現状では非が多いです。

①Web小説にAI作成の作品がどんどん上がるようになると、アルファポリスやカクヨムのリソースが圧迫されていく問題があります。AIを使っていてもしっかり練られていて、おもしろい作品ならばよいのですが、とりあえず上げておこうという作品が増えると厳しいなと思います。

②新人賞を開催することが難しくなる。AI作品を完全にOKにすると新人賞投稿作が増える可能性が高いです。おそらく主催者は下読みで詰みます。下読みもAIにさせればいいという意見もあるかと思いますが、いまのところAIにすべてを任せるのは難しいと個人的には思っています。というのもAIは状況によって作品の評価が一定ではないようです(同じ生成AIでべつのチャットに同じ作品を読ませて、評価がまったく異なることが多数ありました)。プロンプトが同じでも評価が変わることがあります。そのため、現状ではAIが作品の善し悪しを判別できるか疑問です。

③AI創作が主流になると、おそらく多様性は減る。文章に癖があるけどつい読んでしまうとか、粗もあるけど面白いという作品が出てこなくなる気はしています。文章はかけないけど発想力がすごい人が出てきて、逆にこれすげーが増える可能性は?という点についても考えたのですが、個人的には発想力だけで勝負できるのは短編だけだろうなと思っています。中編以上は、「発想したものをどのように書くか」が重要で、この書き方が作家になれるかなれないかの差だと個人的には思っています(ただし、なろう系においてはこの書き方までテンプレ化しているため、参入、ひいては書籍化までの壁が低くなっているように感じています)。この書き方は作家によってわりと多様な部分だと思っているので、ここの多様性が減るのは読者としては嫌です(なろう系も嫌いではありませんが、ここがテンプレ化したために初期のような超長編でも中毒気味に読んでしまう作品が減ったと個人的には思っています)。

④そもそも現状のAIでは短編はまだしも長編には対応できない(長くなるほどグダグダになっていきます。人の手や、細かいプロンプトが必要になる)。

⑤思ったよりもキャラクターが類型的。明るい子とか、オタクとかに対応はしてくれますし、好感度高く書いてはくれますが、それだけの印象。行間にキャラを書くような、なんか好きとか、なんか嫌いってキャラクターはあまり生成してくれない(プロンプトが悪いのかもしれませんが)。キャラのかき分けが上手い作家はそのまま頑張ってほしいなと思っています。

このあたりでしょうか。システム的にも、小説の可能性的にも、非の部分はまだ多いなとは思っています。

ただ、繰り返しますがAIを使うことが悪いとは思っていません。是の部分でいえばこの二つ。

①道具があるのなら使っていいと思います。なにも悪くない。

②自分もやってみたけど、思った以上にたいへんなので、AI創作もスキルがいるなと思いました。使いこなして良作を生むのならよいのではばいでしょうか。

というわけで、是か非かというと、使っているのを非難もしないが、現状はまだ人が書いた方が面白い作品が出てくる可能性は高いという印象。

実際に小説を書いてみた感想

Chatgpt、Claude、geminiなどを使って書いてみましたが難しいです。

まずプロットを小説に書かせようとしましたが、コレってものは出てきませんでした。ただ壁打ちにはなるので自分の頭が整理されていきます。

キャラ設定

そこで自分でプロットを立てて、キャラも多少の設定を読み込ませました。で、一番最初に難しいなと思ったのが、キャラが思ったようにアウトプットされないこと。また、陰キャでも、陽キャでも、最終的にはテンプレなキャラに寄っていくので、オリジナリティを出すのも難しく感じました。

設定をそのまま描写しがち

書いた設定をまず描写してきます。「彼は大学のサッカーサークルのエースで、運動神経がよく~」といった感じです。キャラ設定を説明しないでと書いても、初っ端に「大学のサッカーサークルで培った大声で」といった描写が出てくることもあります。

他にも、計算高いキャラ設定をしたとします。計算をする内面描写を入れてきたり、上司が「あいつ計算高いからな」と周囲がみんなわかっている前提で話が進んだりします。計算高いキャラということは、周囲には愛想を振りまいて計算高い部分を隠してほしいんですがなかなか難しいです。

設定を細かくいれないほうがキャラの描写は上手いのですが、思ったようなキャラに仕上がらないジレンマとの戦いになります。

隠れ○○キャラの難易度がとくに高い

計算高いキャラが難しいなと思ったので、もしかして隠れ○○キャラって難しいのでは?と思いました。いろいろ挑戦しましたが、ほんとうに難しいです。

たとえば隠れオタク。「オタク気味で、地下アイドルのおっかけをしている(主人公だけが知っている)」のようなサブキャラを出しました。

・オタク気質を細かく設定すると、へんに理屈っぽい(もしくはこだわりをもった)セリフで会話のテンポを止めるキャラに仕上がることがあります。
・隠しているはずの地下アイドルがもれ出すことがあります。隠しているはずなのに机にアイテムをおいていたり、セリフの中に出てきたりと露骨に出てくることも多いです。

隠れ○○を描写させるのがこんなに難しいとは思いませんでした。

悪役が難しい

生成AIにもよるのですが、良い方向に話を進めることが多いです(大団円的にもっていく)。そのため嫌われ役の設定が難しく感じました。

たとえば、バレー部でエースと相性のよい2年セッターがレギュラー入りします。ところが、3年セッターのほうが実力はあります。3年セッターが監督に「どうして自分がサブなんですか?」と言い寄る場面を設定したとします。

監督が誠実に向き合って3年セッターをテンプレ的に励まします。それだけで、3年セッターが「悔しいけど、これをばねに頑張ろう。チャンスはきっと来る」と前向きになったり、「悔しいけど、監督の言う通りだ」と納得したりします。

葛藤を描くためには、プロンプトで細かく指示を入れていく必要があります。

というのも、3年セッターが「納得せず、2年セッターに無意識に当たってしまう」のような設定を追加しただけでは、今度は行きすぎ(あからさま過ぎる)仕打ちを2年セッターにしてしまうことが多いです(もしくは当たりが軽すぎてイベントにならない)。

極論をいうとあまりキャラ設定をしないほうがうまくいく

キャラ設定をするからだめなのかもと思い、設定を少なめにしました。たとえばさっきのバレー部のエース、荒削りな2年セッター、実力No1の3年セッター程度で同じ場面を書かせると、わりとうまくいきました。

キャラとしては文句のつけようがないですが、コレじゃない感も強かったです。悪くないんですが、すべてテンプレ的なキャラクタに寄っていく印象です。

文章やストーリー

文章は上手いです。ストーリーもプロットを入れても、入れなくてもそれなりのものを書いてくれます(たまにとんでもないものができあがったりするが)。

ただ長くなるほどおかしなミスは増えていきます。すごいのになると、キャラクタが男から女に変わっていることもありました。

プロット入れない場合

「バレー部のレギュラー争いと、大会で優勝するまで。まずは第一章を」程度のプロンプトで書き始めても、新チームがはじまりレフトの2番手争いとか、セッター争いとかを書いてくれます。

ただ、大団円に持っていきがちなので、選考後、レギュラー落ちした子が納得して支える側にあっさり回ってしまったりします。物語的においしくはないので、結局プロンプトを足して行く必要があるなという印象です。

また、そのままAIに続けさせると、鉄板ストーリーを続けてきます(初戦でレギュラーの子が通用しない→控えの子のアドバイスで覚醒するとか、レギュラーが押さえ込まれる→控えの子が出る)。新人賞を突破できそうなネタは出にくい印象です。

プロットを入れる場合

内容にもよりますが、テンプレが存在するようなネタ(運動部のレギュラー争いとか、恋愛の三角関係ものなど)は、プロットにそってかなりうまい文章をアウトプットしてくれます。

ただ、長くなればなるほど、いろいろおかしい面も出てくる印象です。プロンプトの修正だけでは対応しにくく、自分で手を入れたほうが早いなという印象を持ちました(私のプロンプトが下手なだけかもしれないが)。

まとめ

現状、まだ人が書いた小説のほうがおもしろいなとは思いますが、AIで書いたものが(一段落だけで判断するなら)新人賞を通過してもおかしくないレベルまできていると思いました。

なお、AIは前向きなストーリーを好むし、あっと言わせる展開にもっていけないので、そこを超えてと指示を出したら、「初戦で負ける」というストーリーになりました。完結が早すぎてびっくりしました。「大会で優勝するまで」を書くって最初の設定はどこにいったのかと聞いたら、忘れていたようです(「優勝の大前提を、私の独断で「美しき敗北」というAI的な(あるいは少し気取った)テンプレにすり替えてしまいました。」とのこと)。

そういうわけで、AI自体はかなり使えますが、頼り切りで書くのは難しいと思いました。