一発逆転のアイディア小説 「テンプレ」をひっくり返せ!(ライトノベル編)

2019年12月22日小説投稿と通過

ライトノベル作品で使われる「テンプレ」や「あるあるテーマ」にうまく付加価値をつけた作品をご紹介します。目立つことが、「一次通過」「最終選考」「受賞」への近道ではないでしょうか!

もちろん、最低限必要な「文章力」や「構成力」があることが前提ですが。個人的には、ライトノベルの投稿者で前提をクリアしている人は多いと考えています。一次や二次あたりでうろうろしている人は、確実にそれができていると思います。また、一次落ちの方でも、「文章うまいな」とか、「話はまとまっているんだけどな」という方が多い!

「テンプレ」や「あるあるテーマ」を使って、逆に目立つべし!

「テンプレ」をひっくり返すとは?

いつからこんなにメジャーになったのか、「悪役令嬢」。少女向けラノベやなろうで、「悪役令嬢(が「ざまぁ」する話)」が流行っています。

悪役令嬢というのは、ヒロインをいじめる悪役で、一般的にお金持ちです。ひと昔でしたら、ヒロインが「ざまぁ」する話が基本でした。けなげなヒロインが、悪役令嬢を見返す物語です。悪役令嬢が出てきたら、最後に落ちぶれるところまでがワンセット。つまりテンプレです。

ですが、今流行っているのは、「悪役令嬢に転生した主人公が、バッドエンドを回避するためにがんばる(だいたい前世でゲームや漫画を読んでいて、私の役って悪役令嬢じゃない!とすぐ気づく)」ストーリや、「婚約者を愛されキャラに奪われた悪役令嬢が、婚約者より上のレベルの男性キャラを射止める話(愛されキャラはおバカで、たくさんの男性に色目を使うのが一般的)」などです。

ようは、「かわいくて」「けなげで」「天然の」主人公ではなく、「頭がよく」「普通の感覚を持った」悪役ポジションにはめられた主人公を描く作品です。

流行となった今、「悪役令嬢」さえもテンプレ化されました。悪役令嬢テンプレは流行りだしてから知ったのですが、最初に読んだとき、考えついた人は「天才かよ!」と思いました。

このような、「テンプレ」をひっくり返した作品はわりと目立つと思います。そして、「新テンプレ化」までできれば素晴らしいですよね! つまり、テンプレをうまく使って、「新たなテンプレ」を作るような作品は、「なろう」でも「新人賞」でも目立つはずです!(※)

※まあ、今の「なろう」はいいなと思う作品も浮きあがってこない仕様ですが。多数のWebサイトに掲載して、引っかかりを掴みましょう!

今回は、新人賞受賞作から「テンプレ」をうまく使って書いた作品をご紹介します。

新人賞受賞作

『異世界転生アンチテーゼ 転生魔王はチート転生者をチートで殺します』

「異世界転生者って何でハーレム作りがちなんだろうな?」「そう言う魔王様も、わりとハーレムじゃありませんか?」人間と魔族が対立し、剣と魔法の溢れる“ありがちな”世界・イグラリア。そこでは、元日本人の転生者が魔王として君臨していた。「転生モノ」を好む彼は、側近の魔女・セレスと共に『転生者が転生者を殺す』皮肉な構図を楽しんでいて―。特権階級の三男に転生した剣神、過労死して転生した元社畜、最強を追い求めて転生した魔術王―魔王の許へやって来る「ありふれたチート転生者」の矛盾や身勝手さを、チート魔王が論破し、そして返り討ちにする“異世界転生”ファンタジー。第24回スニーカー大賞編集部大賞受賞作。

第24回スニーカー大賞 編集部大賞 受賞作です。

タイトルからして目を引きます。そもそも、異世界転生が好きな読者さんだって、「異世界転生者って何でハーレム作りがちなんだろうな?」とか、「みんなチーターばっかりだよな!」と思いますよね?

ようは「テンプレ化しすぎじゃね?」と感じる読者さんだって、そろそろ増えてきていい頃。この「テンプレ化」を嘲笑う作品です! 素晴らしい! 異世界転生のおいしい設定は生かしつつ、異世界転生テンプレ化からの脱却。二度おいしい設定だと思います。

キャラクタもいいですね。主人公も転生者で、しかも魔王というところがいい。そして、主人公が出会う異世界転生者が「よくあるチート持ちの異世界転生者」。転生者VS転生者という、これでもかというくらいおもしろい設定です。

もし、「転生者VS転生者」の戦いがしっかり描かれていたのなら、もっと面白かったのにと残念でなりません。アクションシーンが皆無なので、盛り上がったところで肩透かしという感じです。せめてギャグに走ってくれれば、もっと面白かったのに。

ただ、この設定はほんと「待っていた!」という感じでした。

『タタの魔法使い』

2015年7月22日12時20分。弘橋高校1年A組の教室に異世界の魔法使いを名乗る謎の女性、タタが突如出現した。後に童話になぞらえ「ハメルンの笛吹事件」と呼ばれるようになった公立高校消失事件の発端である。「私は、この学校にいる全ての人の願いを叶えることにしました」魔法使いの宣言により、中学校の卒業文集に書かれた全校生徒の「将来の夢」が全て実現。あらゆる願いが叶った世界―しかしそれは、やがて犠牲者200名超を出すことになるサバイバルの幕開けだった。第24回電撃小説大賞にて“大賞”を受賞した、迫真の異世界ドキュメント。

第24回 電撃大賞 大賞受賞です。

異世界転移ものなんですが、本作の視点は「ドキュメンタリータッチの異世界転移もの」なんです。もっとわかりやすく説明するとこうなります。
・弟の学校が異世界転移する(犠牲者を出したものの戻ってくる)
・姉が戻ってきた人たちにインタビューをしてレポートを作成
という感じです。

つまり、異世界に行っていない姉の視点で描かれた異世界転移の作品になります。設定を聞いて、「さすが大賞受賞作」と感動さえしたんですが、さ、作品がねぇ……。ちょっと。

というのも、姉の視点なので学校批判とか、生徒批判が混じるんです。転移でパニックになった人たちがそれでも異世界で頑張った話ではありません。むしろ、姉の冷たい突っ込み(これが作者の現実社会への批判にさえ見えてくる)にけっこうイライラします。インタビューレポートなので突き放して描くのはよいのですが、転移して、仲間を失い傷ついて帰ってきた人たちへの温かい視点が薄い。

「報道とはそういうものだ」と考える人はおもしろく読めるでしょう。ただ、私が読んだのは「ライトノベル」です。しかも「電撃大賞」です。もっと別のキャラクタ視点で、わかりやすく書いてほしかったというのが個人的な感想です。そういう意味では、設定は面白いけれど、おススメしたい作品ではないです。

ただ、読者が「……こう書いてほしかった」と思うのも傲慢で、上から目線だと思いますので、この作風を受け入れたうえでい一言申すならば、「報道について」「社会へ一言」がやりたいならもっとしっかり書き込むべきじゃないかってことです。考え方が薄くて、とても社会派として読めません。ところどころに挟まれる姉の主張が、「ちょっとね……」と引っかかるため物語の勢いがそがれます。

ほんと設定はすごいんですけれど……。

管理人が苦手なだけで、はまる人ははまると思いますよ!

『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』

「これからお母さんと一緒にたくさん冒険しましょうね」「あり得ないだろ…」念願のゲーム世界に転送された高校生、大好真人だが、なぜか真人を溺愛する母親の真々子も付いてきて!?ギルドでは「彼女になるかも知れない子たちなんだから」と真人の選んだ仲間をお母さん面接したり、暗い洞窟で光ったり、膝枕でモンスターを眠らせたり、全体攻撃で二回攻撃の聖剣で無双したりと息子の真人を呆れさせる大活躍!?賢者なのに残念な美少女ワイズと、旅商人で癒し役のポータも加わり、救うのは世界の危機ではなく親子の絆。第29回ファンタジア大賞“大賞”受賞の新感覚母親同伴冒険コメディ!

第29回ファンタジア大賞大賞受賞作品です。

そうだ、チーターが主人公じゃない小説があった! これも異世界(ゲーム世界)転移。チートなのは主人公を溺愛するお母さん。

といっても、これお母さんが主役じゃないのと思わないこともないけれど。個人的には、母親に振り回される主人公がおもしろいです。お母さんが強すぎて、主人公が「自分の存在意義……」と悩む設定も面白い。

アニメ化するし、昨今の「母(または姉、娘)からの愛されファンタジー」の火付け役だし、すごい作品だなと思います。よくぞこんな設定でライトノベルを書こうと思ったよね!

が、なぜだろう。これも設定が面白すぎるのに、いろいろ残念なところが。展開がワンパターンで、母親のキャラ設定がいまひとつなのがちょっとなぁと思います。1巻だけなら面白いけれど、続けば続くほどウザくなってくる。「母親とはウザものだ」という青少年の思考ではなく、読者目線でウザく感じるんです。

個人的には、もっとストーリーの幅が広くて、展開が面白ければよかったのにと思う作品。

『俺を好きなのはお前だけかよ』

ここで質問。もし、気になる子からデートに誘われたらどうする?しかもお相手は一人じゃない。クール系美人・コスモス先輩と可愛い系幼馴染み・ひまわりという二大美少女!!意気揚々と待ち合わせ場所に向かうよね。そして告げられた『想い』とは!…親友との『恋愛相談』かぁハハハ。…やめだ!やめやめ!『鈍感系無害キャラ』から、つい本来の俺に戻ったね。でもここで俺は腐ったりなんかしない。恋愛相談に協力すれば、俺のことを好きになってくれるかもしれないからな!そんな俺の哀しい孤軍奮闘っぷりを、傍で見つめる少女がいた。パンジーこと三色院菫子。三つ編みメガネな陰気なヤツ。まぁなんというか、俺はコイツが嫌いです。なのに…俺を好きなのはお前だけかよ。第22回電撃小説大賞“金賞”受賞作!

第22回電撃大賞 金賞(『壊れたジョーロは使えない』を改題)です。

主人公を好きなヒロインは地味で陰気、そして嫌われているという、テンプレを外した作品です。そして、他のテンプレ的な女の子は主人公ではなく、別の男が好きという。ちなみに主人公はモブ。1巻は学園ハーレム系の逆を行く作品です。

最初は、テンプレを外してハーレムにしなかったのはいいけど、面白くないよなと思っていたんですが。が、途中から想定外の方向へ走り出したあたりから、一気に読めました(1巻)。2巻以降は個人的にちょっと辛い。

キャラクタがあんまり魅力的じゃないし、ギャグが面白くない。そのため、ラブコメのはずなんですが、コメがない。本当に、コメが薄すぎるんです。

また、せっかくテンプレを外したラブコメだったはずが、2巻はなんというか中途半端。正直1巻で完結させてもよかったんじゃないかと思います。4、5巻からまた面白くなると聞いていますが、ごめん読んでいません。

まとめ

ちょっと辛口コメントが続いてしまったので、ファンの方(と作者の方)には申し訳ない。ただ、設定が良すぎるせいで、個人的に「もったいない!!」と思う点がたくさんあったのかもしれません(個人的な見解です)。新人賞を取るくらいだから十分傑作なのですが。

新しいネタ、能力などが思いつかない場合、既存のテンプレをひっくり返してみるもおススメです。
まずは、「テンプレ」をピックアップしてみましょう!