評価シートに関する書き手の受け取り方について

小説投稿と通過

一部の書き手さんが、Twitterやら投稿サイトのほうで、「評価シートきたけど、作品を読めてない感想になっている」的な発言をされる方がいらっしゃいます。

この方たちを責めるためにこれを書いているわけではありません!! 一生懸命書いた作品が伝わっていなかったら悔しいだろうし、賞レースだからこそ「別の読み手にあたっていれば!」と怒ってしまうのも当然だと思います。

評価シートが導入され、毎度一定数の方が「評価に納得できない!」と書かれているのを見てきました。中にはその通りという方もいらっしゃるのかもしれませんが、私が作品を拝見し、評価シート(の概要、とくに納得できない点)を見聞きしたケースにおいては、だいたい「評価シートのほうが正しい」と思うケースが多かったです。

ということで、納得できない気持ちは理解できるんですが、こういう行き違いが生じているという例を挙げてみたいと思います。ただし、作品や評価シートをさらすわけにもいかないので、作品内容は私がでっち上げて書いていますことをご了承ください。

大事なことなので2度いいます。

本記事中に出てくる話は、すべて管理人の創作です!! 拝読した作品を使ってないですからね!!

そんなテーマで書いていない!

事例

作者は王位継承バトルをテーマに書いているが、評価者は青春がテーマになっていると捉えた。

評価例:『青春』をテーマに主人公達に勢いがあってよい。が、メリハリがなく、盛り上がりに欠けた点がおしかった。キャラクターはよくかき分けができている。

作品例

本作では異母兄弟の王位継承バトルが描かれます。いがみ合いながらも互いを意識し、努力していく姿が描かれています。ちなみに、主人公は側室の子(弟)。対する兄は、公爵家から嫁いだ正妻の子で、母親からは弟に負けるなと厳しく、ですが溺愛して育てられています。

なお、兄の婚約者候補の一人(侯爵家の姫)と弟は幼馴染みです。さらに、二人は思い合っています。弟は、二人を応援する友人(側近)たちとともに学園生活を送りながら、あの王妃にこれ以上権力を持たせられないと一致団結しています。

王位継承を巡って、兄弟間のバトル、陰謀、謀略を描いた作品です。そのため、「青春」と評されては、「そんなもん書いてねぇ!!」となるのはよくわかります。ほんとよくわかるんです。

個人的見解

その謀略がうまく描かれていればねと思わずにはいられない。まず、陰謀渦巻く王宮という空気がない。陰謀が雑。謀略はなきに等しい。

さらに、兄を倒して王太子にならなければと本人は思い詰めていますが、兄がわりとできた人で何故切羽詰まっているのか謎です(母親のほうがちょっとやばい人設定されていますが)。

つまり、王位継承バトルとして弱すぎるんです。

ところが、バトルものが好きな作者なのか、アクションシーンはお見事。これだけで一次通過したのではと思うくらい、お見事で熱い。そして、弟と側近たち(片思いの姫を含む)がわちゃわちゃしているシーンは、会話のセンセがあり雰囲気もいい。さらに、この側近の中に「いい感じに腹黒そう」なキャラがいてよい。

とくれば、「青春」という言葉が出てくるのも頷けます。しかし、王位継承バトルがしょぼいせいで、起伏がない作品になってしまう。

選評は、ものすごく気を使った結果のあれだったと思うのです。が、作者としては謀略ものと読んでもらえなかったせいで落ちたと思うのではないかと……。

キャラクターに魅力がない!

雑感

これに納得いかないという作者さん、多い気がします。逆にいえば、選評でよく書かれる内容なのかもしれないですね。

長編を書くのに「苦手なキャラクター」を主人公に据える人は少ないかと思います。つまり、作者好みのキャラクターを主人公やヒロイン(またはヒーロー)に据えるため、これを否定されると「ものすごくがっくり」するのもわかります。

とくに、ライトノベルではキャラクターが重視されるため、評価者が違う人であればと考えたくなるのも当然です。キャラの好き嫌いは人それぞれですもんね。

ただ、これも評価者の目が正しいことのほうが多い気がしています(少なくとも、私は評価者がそう判断した理由に納得できることが多いです)。

具体例

主人公のかっこよさが伝わらない

少年向けはもちろん多いと思います。が、少女向けも成長譚や困難に立ち向かう姫などが主役のケースも多いですよね。

・どうして王位継承を目指すのか不明(または理由がしょぼい)で、ただの簒奪王子になっている。
・敵役がいい人(まとも)過ぎて、主人公に都合良く進む展開に腹が立ってくる。
・ご都合主義で主人公がまったく苦労していない。
・主人公よりも脇役が目立つ。
・ただのチーター。
・テンプレ過ぎる主人公。

主人公をかっこよく見せるのは、チートがあるからとか、王子(姫)だからとか、容姿がいいからではないんです。なにを為すか、困難(マジの困難をお願いします)に立ち向かえるかなどの姿勢が大事です。また敵役がいるのであれば、敵が魅力的であればあるほど、相対する主人公も光ります。しょぼい敵役にしないでください。敵役も含めての魅力です。

しょぼい主人公にダメだしされた

少年向けのほうが多いかと思います。しょぼい(というか、問題ありの)主人公が一定評価を得ているため、その手の主人公を出したケースです。主人公がダメという評価で返ってくれば、「狙ってやったのに!」となりますよね。

・しょぼいのは構いませんが、しょぼいだけでは厳しいかと。
・先行作品の模倣。
・発言がかっとびすぎていて、意味不明。
・主人公もしょぼいが、ストーリーがさらにしょぼい(面白くない)。
・しょぼいだけなのに、主人公に都合の良い展開。

しょぼい主人公を書くなら、ストーリー、もしくは周囲のキャラ、または設定のおもしろさが必須です。それができていないと、しょぼいキャラクターは評価されにくいかと。また、実は○○的な要素を持つ場合は、この○○におもしろい設定を持ってきましょう。そうでないと、○○までもしょぼい……となってしまいます(本人は面白いと思って書いているので、気づかないんだろうなと思いますが)。

主人公の成長が伝わらない

これが一番やっかいな気がします。本人はわりと真面目に「成長」を描いているつもりなんですよ。ですが、読者からすると「成長? どこが?」というケースが多いです。ちなみに、私個人としては「成長が伝わらない」的な評価はもう送らないようにしています。というのも、受け入れて貰えないからです。

少女系ノベル

『困難→(ヒーローまたはヒロインの支えで)打ち勝つ・立ち直る→今度は自分が戦う(相手を支える)』的な展開が多いです。たとえば、「側室の子でいじめられ、敵対国へと嫁ぐことになった姫。生まれた国は戦争をしたくて自分を暗殺しようとしてくるが、王子に助けられ、愛を知る中で強く成長し、王子と一緒に戦うことを決意する」的な話があったとします。あらすじだけ見ると成長譚に見えるのが厄介です。

いじめ自体はそこそこしっかり描かれていた前提で話を進めます(その時点で、姫の悲惨さが伝わってこない論外なケースもありますが)。主人公が悲惨な幼少期を過ごしてきたことはわかります。その結果、遠慮がちになったり、自分の意見が言えない姫様が出来上がるのもわかります。ですが、その結果として王子に対してもビクビクし、まともに話もできない……のになんで溺愛されるわけ?

おそらく、作者としては「そんな環境で自信を失っていた姫が、王子と言葉を交わす中で少しずつ自分を取り戻していく」過程を描いているんだと思いますが、王子が惚れる要素はどこにあった? なぜ一気に溺愛に傾く!

で、傾いたところで、もともとなにもできない姫君なわけです。彼女がするのは、戦う決意だったり、王子の傍を離れないことだったりします。敵が王子を襲ったときに、身代わりで怪我をするくらいはします。

……成長譚?

となるんですよ! 前半、イジイジウジウジしていた主人公が、後半で「私、頑張ります!」と叫ぶだけでは、どうも「成長譚?」と感じてしまうんです。

現実では、ビクビクしていた女の子が、刃物から人を庇ったり、人前に出て発言をすというのは十分な成長です。が、これは物語であるため、そしてスパダリ王子に愛されているため、ある場面で勇気を見せただけでは「成長譚」には見えないんです。スパダリ王子の隣に並ぶ相手として、見劣りしてしまうのかなとも思います。

※追記
なお、一気に溺愛に傾くのが問題なく受け入れられる場合もあります。エピソードの作り方、または王子のキャラクターによって無理なく展開するケースです。ただし、主人公は読者が好感を持つキャラ設定でなくてはいけない気がします。主人公が好感を持てないキャラクタの場合、この溺愛が「何故?」となって、逆に読者の反感を買ってしまいます。そうすると、「成長譚として受け入れられない」、「主人公に好感が持てない」という評価になり、作者が「けなげな主人公が成長する物語なのに、どうして!?」となりやすい気がします。

行動・感情に筋が通っていない女性、自分は可愛そうと哀れむタイプは、よほどうまく書かないと好感を得られない気がしています。


少年系ノベルの例

こっちはとくに例題がなくてもつたわるのではないかと。次のような点で成長が伝わらない作品が多いです。というか、主人公がかっこよく書けていればだいたい成長している感じはするんですが。あ、逆かもしれないですね。成長していれば、主人公がかっこよく書けているといえるのかもしれません。

・そもそも主人公の成長をかいたつもりがなかった!(割合多い気がする)。
・周りが有能過ぎる(主人公周囲のキャラが立ちすぎている)。
・能力値が上がっているだけ。
・そもそもチーターだから、成長譚に思えない(必要ない)。
・主人公が立ち向かう困難がしょぼい。
・敵役がしょぼい。

こんな感じで、少女系に比べると比較的、作者が原因を理解できることが多いです。少年系の場合、設定とか、ネタにこだわるあまり、主人公の成長が後回しにされているように感じます。

力を入れたところが伝わっていない!

具体例

コメディは難しいんです!

評価:(ラブコメを書いたつもりが)恋愛メインなのはいいんですが、ちょっとご都合主義的に見えました。

単純にコメディ部分が面白おかしく伝わっていません。そして、コメディがコメディとして伝わらないと、だいたいご都合主義、そんな偶然あるかよ、となるのがラブコメです。ご注意を。

主人公の悲劇性が伝わっていない。

評価:主人公が成功して幕を閉じますが、あまりに大団円過ぎるかと。

主人公が辛い境遇から成り上がる(または成長する)話として書いたため、大団円でカタルシスのある作品を書けたと作者は思っているのにこの評価。

辛い境遇がさほどでもなかったり、テンプレすぎたりすると、大団円=ご都合主義に取られます。また、悲劇性の描き方によっては、主人公に共感せず作品を読み進めることになるため、ラストが簡単に丸く収まると、「え? 終わり?」となってしまいます。ようは、主人公の見せ方が今ひとつだったり、作品が盛り上がりに欠けたりしたのだろうと推測されます。

などなど、だいたい描けていないことが多いです。

まとめ

悔しい気持ちはわかります。また、Webで公開していたり、小説仲間に読んで貰って、「ストーリーがよかった!」とか「主人公がいい!」という評価を貰っていると、なおさらに「どうして……」となるのもわかります。

ですが、Webでわざわざ書き込むのは、ファン(かアンチ)です。小説仲間はある程度趣味が似ている人が多い、または気を使います。そうすると、作者が欲しいと思われる評価をしてしまいがちなんです。

また、評価シートの文言には、ある程度テンプレがあるのではと思っているため、コピペの結果として多少ずれた表現になる可能性もあるかもしれません(本当にテンプレがあるかは知りません)。それでも、大筋で的外れすぎる選評はあまり見ていないかなぁと思います。

評価シートが思いも寄らないものだった場合、もう一度、冷静に自分の作品を分析してみてはいかがでしょうか?