ライト文芸(キャラクター小説)に応募すべきか、一般文芸に出すべきか?

2020年1月14日小説家になる方法

ライト文芸(キャラクター小説)が人気です。とにかく刊行点数が多く、レーベルが増えました。一般文芸の作家さんが書いたり、Web小説から書籍化したりしていましたが、「売れる」ということで各出版社が力を入れています。

なお、今回は四六版のライト文芸(20~30代をターゲットにしたライトノベル)を除きます。呼び名がいろいろあるようですので、ここでは「キャラ文芸」という言葉を使っていこうかなと思います。

キャラ文芸の特徴!

・文庫で刊行
・表紙はイラスト(挿絵はない)
・キャラ文芸レーベルから出るとは限らない。一般文芸の文庫からも出ている
・ライトノベルのようにレーベルカラーがある

「あやかし」がはやれば「あやかし」が大量に出るなど、流行りものが大量発生します。また、売れれば続刊するなど、ライトノベルと似た傾向があります。違うのはターゲットが女性で、20~30代という点でしょうか。

個人的には、次の系列がまとめてキャラ文芸になった気がしています。
・少女系ライトノベル(コバルトがオレンジ文庫など)
・現代版ライトノベル(青春小説メインの新潮Nexなど)
・一般小説1(キャラ立ちのするちょっと不思議な小説をレーベル化)
・一般小説2(一般小説の書き手が大量に参入)
・Web小説(人気シリーズの書籍化)

発端は「メディアワークス文庫の創刊」だと思います。ライトノベルを読んできた世代が大人になって読む本ということで創刊されたといいますが、電撃大賞を受賞した有川浩さんが一般の読者に売れたのも大きかったのでは? その後、『ビブリア古書堂の事件手帖』でその地位を固め、売れ筋のレーベルとして認識されるように!

考えて見れば、その前にも『しゃばけ』や『僕僕先生』などが売れていましたし、『謎解きはディナーのあとで』がブレイクするなど、キャラクタが立った、安心して読めるシリーズ作品は「売れる」ことが分かっていました。

そして、だめ押しというべきはWeb小説から出てきた『君の膵臓を食べたい』です。

ライトノベルのように、ブレイクしては広がってきたキャラ文芸。現在では刊行点数も多すぎて、書店の棚が足りていない状態です。

キャラ文芸と一般文芸(一般小説)の違い

これを明確にするのはなかなか難しいかと。というのも、キャラ文芸が広すぎる!

キャラ文芸一般文芸
出版形態文庫(イラスト表紙)ハードカバー・ソフトカバー
シリーズ化しやすい少ない
リアリティリアリティよりも、テンプレ重視。テンプレを外している作品も、キャラや設定、世界観がありえない作品が多い。
普通でありすぎると売れない。
リアリティ重視。あまりにもリアリティを無視すると、「そんなに上手くいかない」「ありえない」と批判の元になる。リアリティがない作風なら、その世界観なりのリアリティが必要となる。
文章力文章力より雰囲気が大事。また読みやすさが不可欠。文章力がある程度求められる。作風によっては難解な文体でも受け入れられる。
直木賞に入ることはほぼない。本屋大賞も難しい。権威がありそうな賞レースには入らない。賞レースの対象。ほとんどの賞が一般文芸の新刊を対象としている。
その他ライトノベルのように、テンプレ化しているケースが多い。ただし、新潮nexや講談社タイガは、むしろテンプレを嫌う傾向があるように思う。
流行りに敏感で、売れ筋ジャンルができると似た作品が一気に刊行される。
小説の内容はなんでもよい。流行りはあるが、それを追いかけて似た作品が一気に出ることは滅多にない。いわゆるテンプレはない(ミステリや時代小説のお約束などはのぞく)。
レーベルカラーは基本的にはない。新人賞ごとに多少の傾向はあるかもしれないけれど。

新人賞、どちらに出す?

新潮nexや講談社タイガなど、テンプレを嫌う傾向のあるレーベルは、一般文芸の実績ある作家を引っ張り込んでいます。新人賞も主催していますが、なかなか新人の入りにくいラインナップです(2020/1現在)。

そのため、テンプレ化している作品はキャラ文芸へ、テンプレ化していない作品は一般文芸へというのが基本になると思います。ちなみに、テンプレ化というのがどういうものかというと。

・人外が出る。
一般小説でも人外が出る作品はありますが、それがあたりまえのように受け入れられているかどうかというのが大きいかと。キャラ文芸では、いきなり人外が出てもわりとすんなり受け入れて大丈夫です。一般文芸に出すのであれば、ご自身の日常に「あやかし」が出て受け入れられるかを考えてください。リアリティを持って人外への対応を書くのであれば一般文芸へ。もしくは、人外が普通に受け入れられている社会をマジックレアリズムの手法で描いたり、骨格のあるファンタジー作品であるならば一般文芸へ。

・異世界(魔境とか、秘境とか、黄泉とか)
その世界がわかりやすく、人に優しく、ついでに人外やもふもふが出てくるようならキャラ文芸のほうがいいかもしれません。人に厳しかったり、優しくてもなんらかのペナルティがあるような場合は、一般文芸へ。

・ご都合主義
キャラ文芸では「そんなにうまく行くか!」という作品もOK(むしろそういう作品が求められている)。一般文芸でもご都合主義的作品は大量にありますが。「ご都合主義なところが……」と批判対象に。新人賞の最終選考落選の選評で、「ご都合主義が目立って」「そんなにうまく行くかと納得できなかった」などと言われがちなのは一般文芸。

・キャラクタは?
いい人ばかりが出るならキャラ文芸へ。マンガ的なキャラクタもキャラ文芸へ。悪人があまりにもテンプレ過ぎる場合もキャラ文芸へ。一般文芸だと、キャラクタにもある程度リアリティが求められます。

・年齢層
キャラ文芸なら10代~30代。できれば、30代前半まで。人外は別ですが。一般文芸は何歳でも構いません。

まとめ

よくわからない場合には、一般文芸の新人賞に出すのがよいかと。もし落選した場合、それがご都合主義で、マンガ的なキャラクタが出ていて、人外やありえない設定が活きた作品であれば、Web投稿サイトにアップ後、キャラ文芸系の賞に応募すればよいかと。キャラ文芸系はWeb投稿サイトで、様々な賞が主催されています。一般文芸はいまのところオンライン投稿したものは不可(または不利)になるケースが多いので、まずは一般文芸から試してみるがのよいと思います。

キャラ文芸と一般文芸のどちらが上か下かという議論は不毛です。個人的には「求められているものが違う」のだと思っています。キャラ文芸には「ある程度、テンプレや流行りを外さないという制約」がありますし、一般文芸には「ご都合主義にならず、リアリティが必要という制約」があります。狙って書くよりも、書きたいものを書いて、どちらに当てはまるかを考えたほうがいい気がします。とはいえ、キャラ文芸はある程度狙って書いた方が成功しやすい分野だと思っているのも事実です。