ミステリ書くならここに注意!

小説投稿と通過

ミステリーが大好きです。もちろん、ミステリー以外も好きですが……。

ミステリーを書ける人は本当に少ないのだろうと思います。公募でも、ミステリの賞は総数が少なめですし、Web小説も数が少ないです。まず、トリックが考えつくかが大きいのかな?

さて、最近拝見した小説投稿サイトのミステリ、Webに上がっていた選考通過作品、知人から回ってきた選考通過作品を読んで、「これは……」と思った点についてまとめていきたいと思います。

ちなみに、選考通過作品と書いていますが、ミステリは二次通過=最終候補というケースも多く、ようは最終手前までいった作品も含まれています。

ポリスがひどすぎる……

警察が……とは書けなかった。ポリスがあまりにもアホ過ぎないか注意しましょう。警察小説にはほとんどないのですが、探偵を主役に据えた場合、あまりにも警察の扱いがひどいケースがあります。

本格小説で孤島や雪山が使われるのは、警察の介入を防ぐためです。ありえない警察を書かず、探偵を活躍させるための手法でもあるのです。ですが、そんな配慮もなく、「ポリスが無能だから探偵が活躍する」話がけっこうあります

「警察に配慮しろ」とは思いません。が、無能ポリスは作品の質を下げていると思ってください。探偵がちょっとした推理を披露するたび「すごい!!」と警察が驚くのは……違和感ありまくりなんです。警察もそこそこやるけど、それを超えて探偵が凄い!にしないと、探偵のすごさが伝わってきませんよ?

警察が探偵を頼りにしているケースについても、やはりよく考えて設定されたほうがいいです。出版作品にも多いですが、事件がよほど特殊だった(ホラー絡み・なんらかの専門知識がいる)とか、探偵がなんらかの地位にいるとか、一応理由づけされていることが多いように思います。

ITファンタジーはやめてほしい

ITファンタジーといっていいのかわかりませんが、わりあい多いのが、「○○のセキュリティが甘いからハッキングした」の一言で情報を取得するタイプ。しかも、「そんなところにその情報が置かれているはずがない」のように、ファンタジーにファンタジーを重ねるケースが多いです。

描写等を見ているだけで、分からずに書いてらっしゃるなぁと冷や冷やするケースもあります(私も別に詳しくはないですが、それでも、これは物理的にないと断言できるくらい、ちょっとひどい描写が)。

また、ハッキングができるキャラクターをはじめから出しているならまだしも、急に探偵がハッキングできると言い出したり、助手が「まあ見てろよ?」的にパソコンを打ち出す……。ああ、ITファンタジーに逃げたなと思われますからね?

名前を使ったトリックに注意

名前で男女を誤認させるものや、同じ名前で同一人物と誤認させるもの……いわゆる叙述トリックですね。過去に流行ったのか、先行作品が多くてですね。読み慣れた読者はわりと気づいてしまいます。筆力が問われるジャンルだと考えます。

あと、この手の誤認トリックは、読者がこうだと思い込まなくてはいけません。たとえば、登場人物Aは男だと思って読んでいたのに、実は女だったという驚きがあるわけです。が、公平であろうとするあまり、登場人物Aの性別を明らかに隠そうする作家志望者さんが多い。頑なに隠されると、ミステリーを読み慣れた読者は混乱します。提示されるまで思い込みで男女判定を出さない読者は結構いるんですよ。

「女の子っぽいけど、実は男子ってオチ?」と読んでいたら、「男子と思わせて、実は女子だったとラストで分かる作品」だったとか……、読み終わったときの脱力感といったら。

ちなみに誤認トリックに関しては、ダブルミーニングが素晴らしい先行作品がありまして。賛否ある作品ではありますが、正直このくらいうまくだまして欲しいです。

ネタバレになるので隠していますが、気になる方は↓をチェック!

長沢樹さんの、『消失グラデーション』です。ミステリ部分も普通は思いついても使わないようなトリックなんですが、それよりもダブルミーニングのすごさ。このダブルミーニングを見よって感じの作品です。

書き方の問題(推理・トリック)

①推理に無理がある

着地点しか見えていないため、かなり無理矢理な推理をしているケースがあります。個人的には、ライト文芸のミステリーを書き慣れていない作者さんに多い印象です。

  • 探偵しか知り得ない情報(専門知識、ひどいと裏情報)を使っている。お願いだから伏線入れて。
  • 決定的証拠がないのはOKですが、探偵の推理にはなおいっそうの説得力が求められます。
  • 状況証拠どころか、探偵の妄想だけで推理が進む……

②伏線やミスリードに問題がある

伏線が、あからさま過ぎる、もしくは足りてないケースです。とくに、どんでん返しを重視した作品で、重要な伏線が足りていない場合があります。

また、途中で検討していた推理が、そのまま答えだったというケース。ミスリードかと思って読んでいたら、そのままかい!という場合があります。

ネタ(トリック)が素晴らしいと、本当にもったいないです。人に読んで貰って、問題点をチェックしましょう!

③推理に穴がある

大きいものは、おそらく選考途中で落ちてしまいます。ネタが素晴らしいと本当にもったいないので、誰かに読んで貰うことをオススメします。

登場人物が多すぎる

頭っから登場人物が大量に出てくると、ちょっと辛いです。人物一覧がついていてもしんどいものがあります。

容疑者が10人以上いる場合は整理することをオススメします(個人的には、探偵・ワトソン等も含めて10人といいたい……)。

人物の登場の仕方、名前、描写、口調等で、しっかりかき分けを行ってください。主要人物とモブを早い段階で明確にするのも有効です。出だし部分で犯人を主要人物にする必要はありません。

可能であれば、まず誰を覚えなくてはいけないのか、誰が探偵なのか、誰は信じていいのかを明確にしましょう! 読者が物語に入っていきやすくなります。

番外:毒物ってなかなか難しいかも

小説はフィクションですし、私も毒の専門家じゃないので、そこまで気にして読んではいないんですが……。

毒物といえば、青酸系(青酸カリ、青酸ソーダ)。これも、毒殺するにはむいてないようです。味があるし、開封したらどんどん分解するらしいので。ただ、そんなことは専門知識を持った人でないと知りません。「即効性のヤバい毒」くらいの扱いで使う場合は、あまり気にしなくてもいいと思っています。

個人的に引っかかるのは次のようなこと。さすがに、そのまま書くのはマズイ気がするので、例を上げるに留めますね。

「ヒ素を針の先につけて突いた」のような、致死量を摂取させるのは無理じゃないかなーというケース。

ライト文芸のファンタジーで使うなら、ヒ素じゃなくて植物毒とか、架空の毒物にしてしまえばいいのにと思ってしまいます。さすがに、これで現代警察の目を欺くのは無理筋かな。

トリックを思いついて「これ!」と思って書かれているんでしょうが、「それはちょっと無理では」というケースがあるように思います。

ちなみに小説投稿サイトで、毒物をよく理解されている方が「それはちょっと……」とレビューでご忠告されていました。詳細を書かれていなかったので、作者に伝わらなかったのだと思います。その的確(と私は思うんですが)なご指摘をスルーされていまして。もったいないなーと思うんですけれどね。

まとめ

ミステリの穴や、ミスは作者本人は本当に気づきにくいと思います。可能であれば、読める方に下読みをしてもらったほうがよいです。また、せっかく作ったトリックにダメだしされると、かなり落ち込む(またはイラッとくる)と思いますが、スルーせずによく考えましょう!