角川文庫キャラクター小説大賞の考察2021

Web小説・書籍化,小説投稿と通過

角川文庫キャラクター小説大賞はカクヨムから応募できるため、Web応募された作品は、選考期間中に読むことができます。

前回(2020年)、一次通過作品がアップされたところで、カクヨムに投稿されている応募作品を読みまして、『後宮の検屍妃』を一押ししておりましたら受賞。

ってことで、今年もちょっとだけやってみました。今回は一次通過作品アップ前からミステリ系を中心に乱読して、予想を立ててみました。受賞作こそ当てられませんでしたが、けっこうよい感じの予想を立てていたんじゃないかと思います。

ちなみに、一次前に3作品上げて、うち2作品が一次通過。この2作品のうち、1作品が最終選考まで到達。今回は、下読みさんの「自分の推し作品が最終・受賞すると嬉しい」って話がすごくよくわかりました。

今回も個人的意見ですが、なんでそれが通過すると思ったかを記載してみようと思います。

選考中の桂の呟き&感想戦

後出しじゃんけんにならないように、Twitterで随時呟いておりました。

一次発表前~発表直後

桂@BookclubKatura / 6月16日
某賞のWeb応募作品を少し読んでみたんだけど(あるカテゴリの)、すごく面白い! Eは安定していて、Gはネタ、Sは前半部分(世界観)にすごく惹かれる! Gはこのミスの隠し玉とかで見そうな感じ?

桂 @BookclubKatura / 7月16日

結果出てたんか。意外とあたってて嬉しい。GとSが一次通過なので、2/3。カクヨム応募がたぶん1数編くらいなんで、ミステリオンリーでの予想としては悪くないんでは?

ちなみに、私の読みがあっていたとするならですが!!GやSが上がって、Eがダメだったとすると、穴のない安定した作品でも売り(たぶんキャラとネタ)がないと通過しない賞なのかも? Gの作者は最終選考で何度かお名前を見ていますが、キャラ文芸の合う作風だとは意外。

ちなみに、T3も最後まで読んで面白いなーと思ったんだけど、これ出版できるの?(あるエピソードがらみはOKなんですか?) ただ、角川さんが欲しがっているのはこういう話なんだろうと思った。売りが強いからねー!

発表前から呟いていたのもあって、正確な名称は伏せつつ。ちなみに、Gは「幻狼亭事件 -霊視少女・桃山花乃の怪奇事件録-」、Sは「サクラメントと魔法使い」、Eはタイトル名が「イブ」から始まる作品です。

なんでこの三つをあげたかというと……

G/ミステリ系新人賞で最終常連、通過常連の作者なので、ミステリ部分はすごくおもしろかったと思います。文章はあくがなくて読みやすいので、本格よりもライト文芸向きかもとも思ったくらい。ただ、角川キャラ文の読者層にはどうだろうかと思いました。それをさっ引いてもミステリ部分はレベル違いに捻ってあって、とてもおもしろかったです。ミステリ部分以外で「?」とひっかかる部分もあり。

S/世界観がすごくよかった。冒頭のつかみがほんとうまいと思います。一気に引き込まれました。現代に魔法使いを持ってくるセンスもすごく好き。魔法使いの造形もよく、彼を引き立たせる語り手が素晴らしくよくて、個人的にはイチオシだったんですが……。もうちょっと謎の部分がなぁとちょっと思った。謎がもうちょっと捻ってあるか、シンプルにするかして、キャラクターの勢いでがつがつ行っていたら、管理人的には完璧だった。

E/冒頭の船に乗るまで、事件に遭遇するまでもすごくよくて、おもしろかった!事件自体は目新しさはないのですが、手堅くまとまってまして。キャラクターもやっぱり目新しさはないけれど、うまいなぁと。ただ、クリティカルにココがいい!といえる部分があったかというと……。全体的に想定内でいってしまう感じではあったのかも。私は素直におもしろく読みました(つーかレベル高いよ)。コバルトやビーンズより(だが、コバルトやビーンズのメインでもない)の気もするので、送るレーベルに迷うんではと思う作品でした。

ちなみに、T3はこれ「転生したら三億円事件の犯人だった!!」。去年「無能聖女ヴィクトリア」が取っているのもあって、アリかもなと思うように。実は一次発表の前からざっと読んで(見て?)いて気にはなっていたんですが、正直、「これ、書籍化にちょっとハードルがあるだろ……」ってところがあって上げていなかったものです。一次発表あっておさらいしまして、一次通過すんならアリかもなと思うようになりました。

一次通過作をチェックしてみた

桂 @BookclubKatura / 8月14日

ちょっとつまみ読みしたけど、なんかT3あたりが来そう?Sはかなり個人的好きなんだけど、ミステリネタが弱い?ただ、角川キャラ文のミステリ度は弱めOKだと思われ。どれもおもしろいけど、T3の強みはわかりやすいし。あとは、カクヨム意外からの応募が気になる。

二次発表前の呟き。サクラメントをイチオシしつつ、インパクトじゃ転生かなーと思っての呟きです。このあと、8月後半に二次が発表になり、Webからは、サクラメントと姫君と侍女が最終候補へ。そして姫君と侍女が受賞。

「姫君と侍女もミステリカテゴリだけど、読んでなかったの?」といわれそうですね。実際、途中までは読んでいて、うまいなーとは思ったんですけど……。まあ、T3とは逆の理由で推さなかった感じです。面目ありません。

最終候補・受賞確定後

桂 @BookclubKatura / 8月28日

ってことで、角川キャラクター小説大賞はSが最終選考に。今回はカクヨム応募作品が2/4。2作のうち1作当ててれた嬉しい-!

一次通過前からG、S、Eの3作品を挙げてて、こっからGとSが一次通過。2/3の当たり。一次通過するならT3もアリかなと思って(一次通過前に上げなかった理由は前に書いたような)、SとT3にかけてたんですが、結果Sが来ました。ちょっと選球眼に自信出てきたなー!

受賞作を外していたくせにと言われそうですが、それでも、多数の応募作品の中から3作品上げて、そっから2作品が一次通過。さらに2作品から、1作が最終通過。一応、一次通過作品の中ではイチオシだったので、わりに当たってるほうかなと(どうだろう。そんなことはない?)。

まとめ

去年が、検屍妃や、聖女が入っていたこともあって、売れ筋を狙って取っているのかなと思いました。が、今年の一次通過作品を見るとそうでもないかなと思います。ただ、一次通過作品の中には、売れ筋の後追いっぽくなりそうな作品もあったため、売れ筋狙いを弾いているわけでもなさそうだなと思います。

今回、大きくは外していなかった(?)自分が重視して見た点がこれです。

・つかみ 早い段階でキャラクタを掴める、または物語を掴める。むしろ、両方掴める。
・文章 読みやすいかどうか。お洒落なセンテンスがあればなおよいと思いつつ見てたけど、とくに必須でもなさそう。
・キャラクタ 印象的か(通過作品に絞れば、テンプレよりも独自性があったほうがよさそう)
・仕掛けがあるか ミステリならそのままでOK。それ以外だと、物語上でなんらかの驚き、エモさが必要か?
・特筆するものがあるか

とくに、つかみ、キャラ、特筆するものの3点は重視しました。

これが合ってるのかどうかはさておき、やっぱり「つかみ」は重要だなと思います。