ラノベ、キャラ文芸のテンプレ化しすぎ問題と新規性について(一般文芸も添えて)
売れるんだから「売れ線カテゴリが雨後の筍のようにたくさんでる」のは当然だし、歓迎すべきことだと思っています。だがしかし、昨今のラノベとキャラ文芸はちょっとひどすぎると思っています。
これは作者の問題ではなく、明らかに出版社と編集者の問題だと思っています。今回はツッコミを入れた上で、ではどうすればよいのか?について自分なりにまとめていきたいと思います。
矛盾した言動をする編集者の真意
編集者が「新しいものが欲しい」とサイトやSNSで発信するのをよく見ます。実際に、そういう作品を求めてもいるのだろうと思います。が、「新規性が強い作品」を送るとだいたいはねられます。一次は通っても、次にいけないことが多いです。
おそらく本音はこれ。「他社や他作品と差別化でき、できれば流行にも乗っていて、売れるものがほしい」です。
一般文芸ですが、乱歩賞の『殺し屋の営業術』はまさにこれです。
新規性:「殺し屋」や「営業(お仕事)」自体はとくに新規性があるわけではありません。ただ掛け合わせると新しく感じます(少なくとも他作品との差別化ができています)。
流行:流行のど真ん中ではありませんが、「殺し屋」とか「普通の会社員が悪の道で奮闘」というネタは普遍的に売れるネタで、定期的に流行ります。とくに漫画界隈ではとても多く、一定のジャンルとなっています。
売れる:軽妙な語り口でリーダビリティがある
つまり出版社がほしいど真ん中なのです。最近多いなと思うのが、漫画で流行っているネタを小説というパターンです。新人賞ではありませんが『地雷グリコ』が大流行りしましたが、漫画を読む人たちは「漫画のジャンルとして確立されているんですが?」という感じだったようです。漫画とは違って、『地雷グリコ』は青春真っ直中で爽やかであるという新規性は大きかったかもしれないですが。
出版社がいう「新規性」というのは、実際のところこういうものなんです。
ですが、すでにあるジャンル、流行を、新たな切り口で書くというのはたいへん難しいです。そのため編集者の動きとしてこうなっている感じがします。
新規性があって売れるものがよいが、ダメなら確実に売れるものを取りたい。
一般文芸は必ずしもそうではない気もしますが、ラノベとキャラ文芸は完全にこの思考になっている気がします。
むしろ、新規性があって売れるものがよいが、ダメなら後出しでもいいから確実に売れるものを担当したい、が正解かもしれない。
編集者が作家をだめにしている
先に述べておくと「作家側にも問題がある」とは思います。SNSやディスコードでの書籍持ち作家の発言がときどき流れてくるのですが、さすがに編集者が可哀想になるケースもある。
・刺さる人に刺さるはずなのに書かせてもらえない(刺さる範囲があまりにも狭すぎる)
・書けるではなく、書きたいで話す(別ジャンルを書きたいなど。バトル系ラノベ書きがラブコメを書きたいというレベルではなく、もっと完全別ジャンルという感じです。もちろん書ける作家もいますが、編集者にしてみれば「書いてから見せて」になるのではないかと)
ただ、多くの場合は、作家が編集者(もしくは出版社)に潰されている気はしています。というのも、「流行りのネタ以外は企画が通りません」で泣いている作家があまりにも多すぎます。
編集者としては出したいけど企画を通らないのかもしれないので、出版社の営業が悪いのかもしれません。
が、この結果として金太郎飴のように似た作品が増えすぎています。そして私はラノベとキャラ文芸を読むのをやめました。理由を明確にしましょう。
・読んだものの作品の区別がつかなくなっているため(ストーリー同じ、キャラも似ている)、続きが出るときには一巻の内容を忘れている。そしてエピソードが、小説Aのものだったか、小説Bのものだったか覚えられない(私が馬鹿なだけかもしれない)。
・気に入ったとしても打ち切られることが多すぎる。
もう漫画でいっか、無料で読めるしになっている最近です。
ではどうすればいいのか?
まずは編集者の「新しいものが欲しい」を真に受けないことです。
おそらく編集の本音は「新規性があって売れるものがよいが、ダメなら後出しでもいいから確実に売れるものを担当したい」だと思います。そのため、お勧めするのはこれ。
・他媒体で人気があるが、小説ではあまり見ないジャンルを持ってくる。
・ジャンルでは異色の属性を付与する(既にあるかもしれませんが「爽やか属性のデスゲーム」など)
・組み合わせの妙で持っていく(思いつかないので既存の例を挙げると「殺し屋×営業」「就活×ゲーム」など)
最近はラノベとキャラ文芸を読まなくなったので、一般文芸の例になりますが、こういうのが編集が欲しがってるものなんです。
編集が欲しがっている新規性
今話題の本屋大賞受賞作『イン・ザ・メガチャーチ』:推し活×社会批評
そもそも朝井リョウさんの視点、推し活のリアリティなど作者の筆力がやばいという前提があっての評価なのですが、これも「推し活」自体は目新しいものではないのに、解釈で新しさを出していると思いました。
乱歩賞受賞作『殺し屋の営業術』:殺し屋×営業
読みやすく、リーダビリティのある本作。編集が欲しがっているど真ん中作品です。漫画のほうでは、『マイホームヒーロー』(会社員が娘のために殺人)、『ザ・ファブル』(殺し屋漫画)など、映像化もされた話題作が多数あります。
大ヒット『六人の嘘つきな大学生』:就活×デスゲーム
前半が「就活×デスゲーム」であり、後半まで含めて売れているのだとは思いますが。『プロパガンダゲーム』が売れたことも考えると、「就活×ゲーム」の強さはあるなと思います。
『プロパガンダゲーム』も載せておきます。
変な家:建築×ミステリー×ホラー
建築ミステリーや、ホラー×建築物というのはたいへん多いのですが、それを新解釈で作り直した大ヒット作。ありがちなガジェット、ジャンルを、他にはない無二の作品に再構築した手腕はお見事。
新規性の意味をはき違えてはいけない
よくあるジャンルを外すことは大事です。なぜなら、新人賞応募作に多数の同じジャンルの作品があるからです。その中でナンバー1にならなければ(ナンバー1になったとしても)最終選考には残れません。
だからといって、流行らないジャンル、尖り過ぎて共感を得られない新規性は弾かれます。
重要なのは流行りジャンルの新解釈とか、売れ筋の組み合わせとか、共感を得られるテーマに新規性を入れることです。そうでなければ、売れないとして弾かれます。
また、新規性=ニッチ過ぎて他にない本ではないのです。
「自分は好き。ニッチな層だけど刺さる人には刺さるだろう」という作品は、よほど運がよくなければ取ってもらえないと思います。というのも、ニッチな層が狭すぎるから出版されてないだけなんですよ。
「でもニッチな層しかいないので小説が少ないから買ってもらえるはず」と都合良く思う方も多いんですが、買う層が最初から2000人しかいなければどうでしょうか。そして自分の好きなジャンルだからといって、その本の内容が必ずしも好きになるとはかぎらないのです。
たとえばですが、ライト文芸の「溺愛花嫁」が好きな人が、「溺愛花嫁」のすべての作品を買いますか?
まとめ
売れそうなジャンルをどう料理するか。それが新規性になりつつあると思います。
あと、編集者と出版社は直ちに「金太郎飴の量産」をやめていただきたい。金太郎飴はおいしいけど、小説の金太郎飴は読者を失いますよ(すでにキャラ文芸は読まなくなったし、ラノベは金太郎飴に埋もれすぎて新しいものが探すのが面倒すぎて読まなくなった)。
そして、一般文芸の枠組みにある『地雷グリコ』や『六人の嘘つきな大学生』に、本来ならラノベやキャラ文芸で売れただろうエッセンスを抜き取られていっている気がします。ラノベ、キャラ文芸はもう少し復権してくれと祈るばかりです。



