KADOKAWA決算での『なろう系失速で本業低迷』の記事について
KADOKAWAの決算と早期退職者募集が出版業界に衝撃を与えています。本業のもうけを示す営業利益は約81億円で前年度からほぼ半減し、営業利益率は3%を割りました。特に売上高の約半分を占める「出版・IP創出」事業が不振で、「タイトルの小粒化が進行」「なろう・異世界系など実績のあるジャンルへの偏重」と説明しました。
なろう系は、書店の棚でも大きな比重を占め、ジャンルをけん引したKADOKAWAの方針転換は出版トレンドにも影響を与えそうです。理解の参考になる記事を紹介しながら、現状や今後について考えてみます。
先月、昨今のラノベテンプレ化に対して、さすがに我慢ができずにこんな記事をアップしたばかりでした。
なろう系すべてがダメなわけではないので、なろう系と一括りにするのはためらわれまして、加えて、「どう独自性を出せばいいのか」について書きたかったので、なんとなく焦点がぼやけてしまった感はあります。
今回は、個人的にラノベ・ライト文芸系の今後に関して、「まずいのでは?」と思った点についてまとめていこうと思います。
※ただなろう系以外の作者にとって、KADOKAWAが転換するならチャンスになりそうです。
なろう系に詳しくない人間から見たプラットフォームの問題
なろう系に詳しい人から見たらまた違う意見が出てくると思いますが、外から眺めているとこういう風に感じました。一意見として読んでください。
ランキング偏重が過ぎた
なろう系を商業ベースに乗せること自体は問題ではありません。ただ、ランキングを重視しすぎるようになったあたりから、何かがおかしくなったように思います。
正直、出版社の動きがまずかったと思います。なろう系にヒット作が生まれると、一気にレーベルが増え、ランキングに乗る作品を中身を精査することなく刈りつくすようになった。
そのため、書き手がこう変化していった印象です。
・書き手がランキングに乗ることを目指して同じような話ばかり書くようになった
・ランキング研究をメインにするようになった
・オリジナリティを出すよりテンプレに乗せたほうが書籍化しやすいと気づいた
結果的に中身が画一化し、同じような作品ばかりが並ぶようになりました。
おそらく、作者さんからすればなにがしかで独自性を出しているのでしょうが、読者からするとどれも同じに見えてしまいます。
イメージでいうと、Tシャツの色が違うくらいのもので、それでも赤と黒なら違いが明白ですが、赤とオレンジくらいの違いしかないように思います。
たとえばですが、各ジャンルに色があって、作品ごとにグラデーションが程度の違いしか感じないのです。服屋に行って32色展開なら「多いな」で済みますが、グラデーションとして500色も1000色も並べられては、どれを選べばいいのか分かりません。買い手が分散しますし、飽きもでます。よほどの売りがなければ商売にならないと思います。
「作者が自分で営業できるか見ている」とは?
Webプラットフォームで書いている方からたまに聞くのが『「自分で営業できるか」「ファンをすでに持っているか」を見ているのがランキングだ』という話。自著が販売できたときに作者自身も営業ができるほうがいいという理論らしいです。
これはカクヨムコンが星での足切りがあるせいで、いつしか創作者の方達から出てきた言葉だと思います(間違っていたら申し訳ない)。
自分としては、無料で読めるWeb作品と、書籍が同じ営業手法で通用するとは思えないんですよね。
自分も「Webでの話題作(でSNS拡散されている)」や「投稿1ヶ月で星が5000を超えた」という作品であれば、たしかに充分な下地になるでしょう。
でも、数百の星や、フォロワーが1000人いる程度であれば、個人的には売上げに直結するとは思えません。
書籍が売れる作品を作るべきなのに、Web作家のメインストリームがどこか違う方向へと向かっているように思った言葉でした。
書き手が本にお金を払わない
なろう系が大きくなりはじめた初期ではなく、昨今の話です。書き手は増えたが、読み手は減っている。
最近よく聞くのが、作品を薦めたら「どこで読めますか?」「無料では読めますか?」という返答です。そもそも読まない書き手が増えている上で、さらに「お金を使ってまで読まなくてもよい」人が多い印象を持っています。
さらにいうと、「お金を使ってまで読む気はないが、あわよくば書籍化したい」という作者も少なからずいる印象です。
お金を使わないこと自体はべつに問題だとは思っていません。そういう流れになるだろうなとは思っていましたし、なろう系が読まれなくなれば原点回帰なり、書籍で売れるジャンルへの転換が起こると思っていました。
が、出版社がその変化を読み切れなかったなと感じています。
問題点まとめ
・書籍化のために作品が金太郎飴化した
・出版社がそれに迎合した
・無料で読むのが当然の層が増えた
ラノベ全体の問題
なろう系が一般化しすぎた
初期の頃は独自性のあるなろう系がたくさん出てきていて、Webからかなり改稿してあったり、コミカライズや挿絵欲しさに買う読者も多かったです。中期頃もまだましで、なろう系で線引きされていたので(なろう作家さんは苦しんでいたかもしれませんが)ある程度の棲み分けができていました。
が、頑なになろう系を入れずに踏ん張っていたラノベレーベル、ライト文芸レーベルが、一時のなろう系活況を見て態度を変えます。それでも、新人賞となろう系を分けていた時期はまだよかったのですが、とうとう新人賞にもなろう系調の作品が入ってくるようになります。
棲み分けされていたのが混じり合い、さらにテンプレ化で書きやすいなろう系の数が増え、台頭していきます。
すでに初期のなろう作品とも経路の違う、完全なテンプレ化したなろう作品が大量生産です(もちろん多少の違いはありますし、独自性を出そうとしているのもわかりますが)。
爆発的ヒット作品が生まれず、薄利多売化するのは目に見えていたと思います。
無料で読めるため収益は大丈夫なのか問題
まず書き手でさえも「無料で読めますか?」が出てくる昨今、読者目線でいえば「無料で読めるものがたくさんあるのに」となるのが当然です。
Webプラットフォームもそうですが、電子書籍で小説、漫画は「待てば0円」で読める時代になってきています。とくに、小説は探せばいくらでも無料で読める作品があります。一部でも課金するならまだいいほうで、無料分だけを読むという人も少なくないと思います。それほどたくさんの商業作品が無料で読めます。
小説ではなくコミカライズが中心になってきてない?
小説を、漫画の原作とでも思っていませんか?と出版社に問いたい。
これほどコミカライズが溢れると、「小説は読まなくてもいい」層も増えてきます。さらに中身がテンプレ化しているのですから、読者としての本音を語るならこうなります。
「好みの漫画家のコミカライズだけ読んでおけばいっか」
冗談ではなく本音です。だって、どれも似たような作風で、文章がうまいとか、小説だからこそって作品はほぼありません。お気に入りだけ読んで、あとはコミカライズを追えばいいかになります。
追記:コミカライズが増えることは問題ないのですが、現状、このコミカライズが「無料」で読めるプラットフォームが多く、さらに以前のようなコミカライズが当たれば小説も当たり、さらにアニメ化で~がうまくいっていないことが問題だと思っています。
まとめ
小説だからこそという作品が読みたいし、超大作も読みたいし、このラストは想定外だったって作品も読みたいです。
なろう系にも好きな作品はありますし、なろう系が悪いとは思っていません。ただ、あまりにも同じ世界観、同じ展開、同じようなキャラクターとなると、10冊くらい読んだところで食傷気味になります。
パクりでないのに、ここまで似ているというのは、ジャンルとしての進化が見込めないということだと感じています。
だからこそ、ここしばらく記事のほとんどが一般文芸ばかりになってしまっていました。だって、ライトノベルやライト文芸で書籍化したいなら、新人賞を取りたいなら、流行りのネタを追うしかないとしかいえなかったからです。奇をてらったもの、新しいものは、ほとんど「賭け」にしかなりません。
心底、復権してほしいとは思いますが、個人的にはかなり難しいという気がしています。


