「あの本、来そうだよね」が友人とほぼ共通している件について

2022年3月25日小説投稿と通過,小説投稿の豆知識

昔ながらの友人はだいたい本好きが多いです。で、その友人たちと本の情報交換をたまにします。不思議なことに、読んでもいないのに「あの本、来そうだよね」って本が一致することがすごく多いです。

「こないだ本屋で見かけたんだけど、〇〇がおもしろそうだった。読んだことない作家だけど」
「わかる! 私も買うか迷った。あれ、売れそうだよね」
「な。あれは来そうだよね」

適当に話を合わせているだけではなく、本当に「わかるわかる」ってなります。むしろ、だからこそいまだに関係が切れずに定期的に連絡を取り合っているのかもしれません。

別に、自分たちが「売れる本がわかる!」といっているわけではないです。売れる本がすべてわかるわけでもないし、すべてが当たるわけでもない。でも、目立つ本ってあるんですよ。逆に、目立つところにあっても「これは、仕掛け人の期待ほどリターンはなさそう」っていうのも、意外と共通しています。

ということで、だいたい自分や友人が見ている点をまとめてみたいと思います。

表紙とタイトル

まずは手に取らせるために重要なんですが……。

一般文芸はわりとわかりやすく、編集さん力入ってるな(もしくはセンスいいな)って本があります。本屋大賞を見るとわかりやすいです。本屋大賞の候補は、以前に増して「(読んでないのもあるけど)知ってる本ばかり」って話を友人達としています。なぜかというと、「とりま本屋で見た(手に取った)」本が多いから。本屋大賞の上位にあるのは、だいたい目立つ本だなと思います。

一般文芸はまだタイトルが目に入りやすいので、『元彼の遺言状』とか、『推し、燃ゆ』とか、タイトル時点で友人達の間で話題になりました。純文学を読む人少ないんですが、『推し、燃ゆ』は芥川取る前からみんな知ってたなと思います。

タイトルが上手いなというと、斜線堂有紀さん。この人の本はとりあえず目に入るという友人が多いです。表紙デザインも読者ターケットをしっかり掴んでいるものが多い印象です。

ラノベ・キャラ文芸のほうが、表紙買いは多かったんですけどね。今でもSNSで「イラスト買いする」とよく聞きますし、否定もしません。

が、イラスト表紙の本が増えてきたため、よっぽどでないと本屋では目立たないように思います。数年前だと、本屋へいけば平積みの中に「目立つ!」って本があったんです。が、今はほとんどないです。人気のある絵師(イラストレーター)がいくつも掛け持ちしているのか、同じような絵が並び、絵師のレア感も薄くなってる気が。

逆に、タイトルで引かれてってケースですが、これも少なくなってきた気がしています。というのも、イラストが華美でぱっと見、タイトルまで目に入らない。

ただ、まずは表紙とタイトルが第一段階。「来る」って本はまず表紙やタイトルがキーポイントです。

ちなみに、ライト文芸で話題になった表紙はこれ。『下鴨アンティーク』シリーズ。『後宮の烏』の作者です。『後宮の烏』の1巻もかなり目立った気がします。

あらすじより、まずは帯(コピー)

友人達も「あらすじは読む」というんですが、それよりもまず目につくのが帯です。あらすじだと、200~400くらい使えそうですが、帯は一言。

30文字で読者を惹きつけるネタがあるか!(または作中台詞)

これが重要な気がしています。あらすじってよりもコピーですね。恋愛小説(やそれに近い小説)なら読者に響く作中台詞とか、ミステリーなら何が起こるのか、ライトノベルなら世界観やカテゴリ。

その点、『流浪の月』は作中の台詞をうまく帯や宣伝に載せていたと思います。この作品が好きな読者がはまりそうなすごくセンサティブな言葉をうまく抜き出してあった。

逆に言うと、30文字で読者を惹きつけるネタ、台詞が書けなければアウトって話です。

小説投稿をされている方で次に当てはまる方はいらっしゃいますか?

  • 一次や二次までは通過する(したことがある)。だいたい通過1割くらいを目安にしてください。
  • 推敲をちゃんとしている。
  • 長編・中編で五本以上書いている(投稿している)。

上に該当する方で、次のチェックで半分以上当てはまる方。

  • 文章はそこそこ書けるほうだ(周りからも読みやすいといわれる。上手いといわれる)。
  • 人に読んで貰ったことがある(わりと高評価をもらった)。
  • 自分で読んでも大きな矛盾は見つからない。
  • 一般的な書籍と比べても、とくに見劣りはしていないと思う。

おそらくなんですが、この手の人の作品は「普通に読める」し「そこそこおもしろい」です。ただ、売りがあるかというと、「特にない」としか言いようがないです。キャッチコピーを作ろうとするとすごく困る感じがします。そういう作品を書かれる方はほんとうに多いんです。

過去、1割どころかもっと上位に何度も食い込んでいる方と交流があったんですが(最終に残ったこともあった)、受賞が遠かった。この人の場合、もうちょっとランクアップしてて「普通におもしろい」んですが、売りがほんとうにない。正直、トータルで見ると受賞作よりも面白い気もするんですけど、「普通」から抜け出せない。

読者が求めているのは、「すごく響くもの」「あっと驚くもの」「誰かと語りたくなるもの」なわけで、編集者からすると「普通におもしろい」は売りにくいと思います。ただ、総合力はあるので一次くらいはあっさり通過してしまうし、うまくいくと最終くらいまではいってしまいます。

で、なんで受賞できない(最終に残れない)って苦しんでいる創作志望者の方がけっこういる印象なんです。

はたから見ていると「普通だから」としかいいようがないんですよね。アドバイスを求められても、正直一番困る感じです(^_^;)

じゃあ、普通だと受賞できないのか?というとそうでもないと思います。おそらく、新人賞を開催しても、すごくやばい作品はそうそう来ないです。そして、すごくやばい作品を見逃す下読みがいます。総合力だけで勝ち上がる人は一定数いるので、このタイプの人は諦めずに頑張ることが大事かなと。ただ、取った後のほうが厳しいんだろうなと思わなくはない。編集さんと組むことで化けることもあるだろうし、継続は大事だと思う。

売れ線の後追い。新しければさらによい!

一般文芸はあんまりないかもしれないですね。とくに純文学はそうです。逆に、ミステリーは後追いしても新しい!

今村昌弘の『屍人荘の殺人』が爆発的に売れてから、各社一気に特殊設定ミステリーを出すようになりました。もともと特殊設定ミステリーはたくさんあった気がしますけど、『屍人荘の殺人』以降はジャンルとして確立されています。新本格隆盛期に近い盛り上がりだと思います。

しかも、特殊設定に関していえば、「設定」が多種多様なので、どんどん新しいものが生み出されて面白いです。特殊設定ミステリーは、設定の使い方が重要なので、うまく設定を使える作者を編集は欲しがっているのではと思います。メフィストとか、最近(2021年あたりの出版)ずっと特殊設定の作品ばかりな気が?

特殊設定ミステリーの応募作はあんまり読んだことがないんですが、これ難しいのかな?特殊設定を都合良く使いすぎ、または特殊設定がミステリーに絡んでいないものしか読んだことがないです。書き手の方は気を付けてください。

ライトノベルについてはいうまでもなく。流行りの設定でも、新しさがあればどんどん受賞しています。この新しさっていうのが重要かと。

難しいのはライト文芸(キャラ文芸)。キャラ文芸というだけあって、キャラ重視のため……新しさを出しようがない。2022年現在だと、薬屋フォロワーが目茶苦茶売れています。あとは、わた婚フォロワーっぽいのも多いですが、こっちはまだ設定やキャラでうまく差別化できている気もします。

キャラ文芸はちょっと特殊な感じなので(似ているほうが売れる……)、新人賞の対策がしにくいです。

まとめ

1冊書き上がるのはたいへんだし、作家ともなれば編集の壁を越えて出しているからなおのことたいへんだと思います。

SNSで「自信があったのに落ちた」「受賞作がおもしろくない」という投稿者さん。

わからなくはないです。正直、ある賞での一次落ちが、高次選考~受賞ってケースは多々あります。自分の作品を見逃す下読みに恨みつらみがわくのは当然です。ただ、「売れる」ってポイントだけに絞ってみてみると、妥当なことが多いです。こんな売れそうな作品を落とすなんてってケースは、過去に数回しか当たったことがなかったり。そういう意味では、最終選考作品でも「売れなさそう」って作品あります^_^;(最終作品がネットでたくさん読めるようになるとはすごい時代だ)。

「新しい」って分かりやすい言葉ですが、すごく難しいですよね。でも、読者が求めてるのは「こんなん読んだことない!」なんですよ。