選考通過できなかったときのチェックポイント

2021年7月9日小説投稿と通過

※注 2023年の電撃の一次通過率は他社の二次以上に相当するので驚いています。以下は2021年の記事です(ただ、当時は三次落ち、四次落ちを複数読んでの所感なので、まったく無関係でもないかもです)

電撃一次祭りの真っ最中に書いています。出してもいないのですが浮かれてしまいます!

さて、管理人は電撃受賞者の表に出ていない過去作品を読んだことがあります。また、他賞デビューの方の、電撃最終一歩手前(四次落ちになるのかな?)の作品も読んだことがあります。こちらも表には出ていません。

自慢か? といわれそうですが、自慢です。もともと薄いご縁のため、今はまったく繋がりがありませんけどね(もちろん、こんなサイトを私が開いたこともご存じではないです)。

お二方の作品、それからwebに投稿されていた四次落ち(三次通過)の作品をいくつか拝見し、私なりの所感をまとめました。ド素人の現読み専のいうことなので、さら~と読み流していただけると嬉しいです。

ちなみに、↓の記事がある程度出来ている前提でのチェックポイントになります。細かい内容に関しては、↓の記事のほうが詳しくポイントを上げています!

基本のチェックポイント

個人的に、小説としての型が守られていれば一次は通過しやすいと思います。

うまく完結しているか?

作品が閉じているというより、ストーリーが完結しているかが重要です。次のような点ができていない作品で一次を通過するのはよほどレベルが高くないと無理だと思います。

  1. 伏線をほぼすべて回収できている
  2. 冒頭の問題提示に、しっかりしたアンサーがある
  3. 主要キャラクタにおいて、成長・変化が見られる
  4. ラストに山場がある
  5. ラストを力業で閉じていない

会話文がうまくかけているか?

  1. 誰の台詞かわかる
  2. 会話にキャラクター性が出ている
  3. 会話文のテンポがいい

そして個人的には〔チェックの方法としては)邪道と思っているのですが、以下のポイントができている作品はわりと上に行きやすい気がしています。ライトノベル(とライト文芸)にのみ通用すると思ってください。一般文芸(エンタメ)でもある程度通用しますが、これだけでは加点になってもクリティカルにはならない気がしています。

  1. 会話文だけ読んでもある程度、物語が把握できる
  2. 会話文だけ読んでも、設定がだいたい理解できる

「は? 地の文大事! 描写もいるっていうじゃん、だったら、筆力ある作者はダメってこと?」といわれそうですが、上が成り立つ作品は強いです。そして、「上が成り立つ」=「地の文が薄い、描写がない」わけではありません。

会話文というのはライトノベルの重要な要素です。これで話が掴める(設定がわかる)と、地の文がするする入るようになるんです。そして地の文が適度で、描写が上手いと相乗効果があります。簡単にいうと「勢いのある」作品になるんです。決して、地の文・描写が薄くてもいいといっているわけではありません。

ただ……。個人的には表現力・描写力は後からついてくるけど、会話文はセンスだと思っています。地の文・描写が圧倒的に上手いなら話も変わってくるかもしれませんが、会話文が上手いほうが読者を掴みやすい気がするんですよね。

だからといって、キャラクターに設定をベラベラ喋らせるのはダメです。会話文のセンスというのは「設定をうまく会話に落とし込めている」「会話でキャラクターの性格がつかめる」「会話自体がおもしろい(テンポがある)」ことをいいます。会話文が上手い人はほんと強いです。

冒頭で先を読めるか?

最初の数十枚で、先が読めますか? 

  1. 数十枚で、読者を「続きが気になる!」に落とせますか?
  2. ミステリーか! バディものか! など、読者が作品ジャンルを想定できますか?
  3. 早い段階で話に動きがありますか?
  4. 早い段階で読者は主要キャラクターの性格が把握できますか?

つかみが大事です。とにかく、「続きが気になる」と思わせれば勝ちです。そうでなくとも、読者(選考者)が「こんな物語になるのだろうな~」と予想できるかどうかが大きいです。

何度か書いているんですが、「朝起きて、顔を洗って、ご飯を食べて、学校へ行く準備をして、通学路で友達と会って、ようやく学校へ着いてヒロインと会う!」では遅いんです。

別の例を挙げると、「現実社会の不遇な日々を描いて、死にたいと苦しみの描写があって、自殺しようとして止められて、でも帰り道で事故にあって、異空間で女神様と会う(ここまで30枚……)」では遅いんです。

例があんまり過ぎて、「自分はそんなことしてない」と思う方も多いのかもしれませんが、冒頭で読者の気を引ける方って意外にも少ないんですよ。

公募には枚数制限があります。うまく物語に誘導するのは大事ですよ。

既存作品に似ていませんか?

多少似ていても獲ることがあるのでなんともいえないんですが……。これが理由で落とされるケースはあると思います。一度、チェックしてみましょう。

既存作品に似ている場合、「どれくらい似ているか?」「既存作と比べてどうか?」のどちらかで落とされると思います。似ている部分を見ない振りしてでも通したいと思えるかどうかがポイントです。既存作を超えておもしろければ通過する可能性が高いかと。ただ、流行り作品から持ってきた場合はプラスアルファがないと難しいでしょう。

その他のチェックポイント

  1. 文章は読みやすいですか?
  2. キャラクターのかき分けができていますか?
  3. 山と谷がありますか?
  4. ラストで盛り上がりがありますか?
  5. 主人公の行動に一貫性がありますか?

このあたりですかね。他、思いついたら追加していきます。

一か八か、他にない作品で勝負した場合!

過去に四次落ち作品を読んだとき、「よくこれで四次まできたな……」と思ったことがあります。基本のチェックポイントはほぼクリアしていたと思います。なのに、「なぜ?」と思ったのは……設定にどでかい穴があったから。

驚くほど大きな穴で、正直、それを埋めると作品が成り立たないレベルのどでかさでした。最終に乗れなかったのも仕方がないと私は思ったんですが……、おそらくご本人はまるで気づいていません。

逆にいうと、それだけのどでかい穴があっても、この辺まではこれてしまうんです。ちなみに、可はそこそこ不可の少ない作品でした。まず、物語の構造は分かりやすいくらいに分かりやすかったです(陳腐とすらいってもいいです)。文章は美文ではないですが読みやすく、キャラは感情移入しやすいタイプ。ストーリーの流れもスムーズでした。これだけならもっと早くに落ちていたはずです。では、四次選考まで乗った要因はなにか?

そのテーマ(設定かな?)はラノベで見たことがない……。という点が評価されたのではと考えています。

別媒体では当時人気のテーマだったので、うまく落とし込んできたなと思いました。競合がなく、書ける人だったため、するすると三次通過したんだろうなと思ったんですよね。ある程度の技術があって、他にはないテーマ(設定)をかける人は強いんです。

尖っていても、小説技術が追いついていないことがある

私の友人に、おっそろしくアイディア力のある人がいました。「そんな設定見たことない」というネタをバンバン思いつくんです。しかも、半分くらいは一般ウケしそうなネタなんですよ。が、この人は技術面で問題が……。あらすじはすごくおもしろそうなんですが、本文が書けていない。いやマジで。正直、某賞の最終手前までいったと聞いて見せて頂いたんですが、絶句でした……。アイディアや流れはすごくいいのに、小説として見たときに基本ができてなかったんです(本人にも正直にいった……)。

ということで、アイディアに自信のある人は次の点をチェック!

  1. 許されないレベル(数・大きさ)の矛盾がありませんか?
  2. アイディア(ネタ)の説明が上手くできていますか?
  3. アイディアを活かしたストーリーになっていますか?
  4. セリフだけを読んでも作品の大まかな流れがわかりますか?
    逆に、地の文がスカスカ、セリフ頼みになりすぎていませんか?
  5. 最後まで書き切れていますか?

ようはアイディアはすごいけど、基本ができてないんです……。そのため、一次を通過すると最終手前くらいまで行ってしまうことがあります。たぶん、アイディアが良すぎて、荒い部分に目をつむってもらえるのではないかと。が、いざ最終となると……、出版できるだけの読みやすさがないんですよね(もしくは、一行改行でスカスカになるケースもありえるのかな。私の友人はとにかく書き込みすぎで読みにくかったんですが)。

一度、次の2点を見直してみたらよいのではと思います。
・ストーリーをむだに複雑にしていませんか?
・最後の山場がしっかり書けていますか?

ここに当てはまる人は読める人にアドバイスをもらったほうがいいです。そして、それを素直に受け入れたほうがいいと思います。個人的に、一番もったいないと思うタイプの作家志望者です。こういう人は、小説の形さえつかめれば売れる確率は高いと思います。

尖っていても、読者が求めていない!

他に見ないアイディア・設定だとしても、読者に求められていなければ落ちます。

仲間内からの評判はよい、自分の作品はほんとうにおもしろい……だから、選考委員に見る目がないと考えるのはやめましょう。仲間内は遠慮して本音は言えません。もしくは、仲間内だから同じ嗜好の人間が集まっているのかもしれません。

SNSで、「尖りすぎて受け入れられなかった……」的な書き込みを見て、Web小説を拝見すると、だいたい「方向性が間違っている……そら、落ちるのもしょうがない」というケースが多いです。

  1. それを求める読者は本当にいますか?
  2. 刺さる人には刺さる……でも極々少数の特殊性癖では困るんです。

チェック項目はこれだけです! 読者がいるのか、売れそうなネタなのか、よく考えましょう。

本当に尖った作品なら、どこかに刺さる

読者を見込める尖った作品なら、どこかの賞に刺さると思います。諦めずに頑張ってください!(使い回しを推奨しているわけじゃないけど、再応募という手も……)

ただ、尖った系はどうしても読み手にとって好き嫌いが出てしまいます。「尖ったネタ」+「小説を書く技術がそこそこある」という作者は決して多くはありません(というか、これが出来ていれば早い内に受賞している)。すると、ネタだけで一次を通過するかどうかという、かなり一か八かの賭けになります。

・選考委員の好みか?
・その箱に良く出来た作品がどれくらいあるか?

といった、運が絡んでくると思います。運ではなく、実力で一次を通過できるよう、小説技術を磨きましょう!

それでも運や相性はある

新人賞の箱から10作品を無作為に取り出します。これを10人で選考したとします。彼らの持ち票はこうです。

良い(1位~3位)……3票
あと一歩………………5票
受け入れがたい………2票

「良い」を9~10票取る作品は、もちろん一次通過するでしょう。

10人中5人が1位に選び、残りの2人が「受け入れがたい」、残りの3人が「良い」または「あと一歩」とする作品があるかもしれません。この手の作品は、一次落ちする可能性もありますが、刺さる人には刺さります(つまり売れます)。他の賞に使い回せば、一次落ち→最終くらいのことがあってもおかしくないです。

このあたりまでが、上位選考・最終・むしろ受賞してもおかしくないラインかなと思います。一次選考はだいたい1人でやっているので、落ちる可能性があるのもご理解いただけるのでは?

ちなみに、1人が3位、残りの5人が「受け入れられない」、残りの4人が「あと一歩」。これは刺さる人には刺さるとはいえません。一次落ちの可能性が高いかと思います。

「良い」を一票も貰えない場合もまた一次落ちするでしょうし、「良い」が1、2票であれば、これもまた一次落ちの可能性が高くなるかと思います。「良い」が5票に、「あと一歩」が5票という作品は、一次は通りやすくても、二次、三次と高次に行くほど厳しくなるかなと思います。

私個人の考えですが、こう考えると一次には多少の運もあると思います。ただ、運だけでないものもある。むしろ、運以外の実力が占める割合も大きいと思います。

絶対に受賞したいと思うのであれば、「運」で落ちたと考えるよりも、どこがダメだったのか、どこはいいのかを、客観的に見てください。