上手いのに選考通過できない(受賞できない)のはどうして

2023年3月20日小説投稿と通過

管理人の選球眼

私がどれくらい読めているか気になる方もらっしゃると思うので、一応過去の実績から書きます。

2022年は余裕がなくてできなかったのですが、角川キャラクター小説大賞の予想を二年連続でやっていました。今はやってないのですが、当時はTwitterをやってまして、そちらにも書き込みをしてたので後出し的なものではないです。

2020年は、一次通過が出たあとに通過作品(でカクヨム掲載のもの)をざっと読んで、「後宮の検屍妃」をイチオシしてました。実際、この年はこれしかないだろうと思うくらいだったので思わずTwitterに書き込んだのを覚えています。

2021年は一次通過が出る前からチャレンジ。さすがに全てを読むのは不可能なので、ミステリジャンルを中心によさそうなものをピックアップしておきました。で、最初に3作上げていたうちの1作が最終選考へ(ちなみに、最終4作中、web応募は2作なので、片方を当てたことになります)。

で、調子に乗って2022年もやるつもりだったんですが、忙しかったし、Twitterを辞めたこともあってやる気がなくなったんでした。

最近、重要視している点

以前にも書きましたが以下の点は今も重視して読みます(ラノベと一般で多少重視するところは異なりますが)

・つかみ 早い段階でキャラクタを掴める、または物語を掴める。むしろ、両方掴める。
・文章 読みやすいかどうか。お洒落なセンテンスがあればなおよいと思いつつ見てたけど、とくに必須でもなさそう。
・キャラクタ 印象的か(通過作品に絞れば、テンプレよりも独自性があったほうがよさそう)
・仕掛けがあるか ミステリならそのままでOK。それ以外だと、物語上でなんらかの驚き、エモさが必要か?
・特筆するものがあるか

最近、これに加えて、まとまりすぎていないか、または、読者の想定を超えているか、を気にするようになりました。

意外に思われるかもしれませんが、まとまりすぎている作品は、読者の想定を超える何かがなければ、上にいけない気がしています。逆にいうと、まとまっていて、読者の想定を超える何かがあるものは強いです。

というのも、普通によくできている作品がいくつも落ちるのを見てきたからです。

下読みさんとか編集さんがよくいう「勢い」の正体ってこれじゃないかな?と最近思っています。

まとまってる・プロみたいは危険かもしれない

「まとまってる」「プロレベル」っていわれると嬉しいと思いますし、読んだ方も嘘偽りなくそう思っていると思います。通過できないときは、「あんなにうまいのに!」「あれが落ちるの!?」と周囲からいわれたりしませんか。

でも、「まとまってる・プロみたいだ」が真っ先に出て来たときは、けっこう危険です。

うまいんですよ。小説としての形は綺麗に整っているんです。文句はないんです。では、なにが問題なのかというと、読んだときに「残るもの」がないんです。

ここがよかった。このシーンがいい。この流れがヤバイ。ここで引き込まれた。このキャラクターが萌える……考えたら出てきます。逆にいうと、考えなければ出てこないのです。考えても出てこない作品はたぶん一次で落ちるので、「うまく」ても問題外になってしまうのです。

「全体的にすごくよかった。読後感もいい。面白かった。」

おそらく、これらはあったほうがいい前提条件でしかない。

出版社が求めているのは、その先を持っている人であり、読者が真っ先に「ここが!」といえる作品なんだと思うようになりました。

うまい作品に限って「勢い」がない

友人のいっていた言葉で印象的なものがありまして。

「小綺麗にまとめようとすると特化したものが消える。特化しようとすると完成度が落ちる」

いくつか作品を拝見していたので、「わかる」と思ってしまいました。

たとえば、強い設定(またはネタ)を書く場合、その手綱を引いてラストまで書き通すのはたぶん難しいんだと思います。というのも、ストーリーに無理やりはめると設定やネタの鮮度が落ちます(尖度というべきかもしれません)。尖度を保ったままストーリーにはめるには、相当の筆力が必要なんだと思います。

・設定が複雑で読み手を混乱させる
・設定が強すぎてストーリーが強引になってしまう
・設定が尖りすぎて山場がよくわからなくなる
・設定とストーリーの乖離が激しい
・設定に他の要素が見合っていない

そのため、ほどほどの尖度で、ストーリーや小説としての型に綺麗に押し込めたほうが、「うまくて、まとまった」作品になるのだと思います。で、一次や二次くらいだと、このほうが通りやすいのかもしれません。

うまいのに落ちる人の特徴

小説はできているのにエモくない

・恋愛ものでキュンできない
・冒険物でワクワクハラハラできない
・感動物で涙腺が壊れない(必ずしも泣く必要はないけど)
・ミステリでドキドキできない(結末にある種の驚きはあっても、よほどのネタでないかぎりそれ一本では弱いです)

作者は、ドキドキ、ワクワク、感動できるように書いているつもりなんでしょうが、たんたんと読めてしまう作品は意外と多いです。そして、全体を通してみれば「よくできている」ために、どうして落ちるのかわからなくなります。

驚きがない

読者は先を考えながら読みます。そして、想像以上の終わりがないと落胆します(我が儘でもうしわけないとは思ってますが)。綺麗に型にはまった作品に多いのが、全体的に見るとすごくレベルが高いのにインパクトがない作品。

型にはめて書くって、ある意味では楽なんだと思われます。どう読者を裏切るのかが大事です。

前出の、エモくないとは表裏一体なことも多いです。読者の想定通りでもエモい作品に仕上がることはあります。ただし、読者を綺麗に裏切った作品は、ほぼ必ずエモくなります。

作者の考えが反映されすぎる

ようは「説教クサい」ってことです。もちろん本当に説教しているわけではなく……。

・大人になった今わかることを子どもに教えたい(勉強はできるときにしておいたほうがいいよ)
・怒るのは愛情があるから(最後に「実は愛されていたのね、私!」みたいになる)
・友だちは大事
・手作りは愛情の印
・LGBTに関すること

キャラクターがそう考えているのは構いません。問題なのは、作者読者押しつけているケースです。

エンタメで道徳的ストーリーを読みたいわけではないので、考えの押しつけに感じてしまうことがあります。ストーリーをうまく作り、読者が「勉強はやっておいたほうがいい」と思えるのならすごくいいと思います。が、作者がそれを当たり前としてストーリーやエピソードを組み立てるケースが多いんです。とたんに説教クサく感じます。

「勉強しなさい!」というのではなく、「あ、勉強しなくちゃ」と思える方向に持っていかなければいけないんだと思います。

どこかで見た感じ

言葉通りで、既視感のある作品です。先例があるため、枠に当て込みやすく、書きやすいんだと思います。尖ったものがあれば(賞によっては二番煎じを欲するところもあるので)受賞するので、別に悪いとはいいません。

ただ、既視感のあるものは読者も先を想像できてしまいます。そこを超えて驚きを提供するのは、かなり難しいんじゃないかと思います。

まとめ

これいったら怒られそうなんですが、この尖った部分がないとプロになっても埋もれるだけだと思います。だからこそ編集も、多少下手でも尖った人を探そうと躍起になっているんだと思います。

ネタが新しく、面白いのは文句なく求められている作品です。ただ、これだけ作品が出尽くすと、そういうのを探すのも難しい。そうなると、それ以外の部分でいかに尖れるかってことだと思います。

・読者が萌える(はまる)キャラを作れる
・読者がはまる設定を作れる
・読者の想定を裏切れる
・読者がおどろくほどに設定が複雑

多少、文章や構成に粗があっても、こういう人を取っちゃうんじゃないかな思います。まあ、少なくとも自分ならそうします(編集者じゃないけど)。