自作に自信のある人の陥りがちな欠点2 中盤編
冒頭に関して気づいた点はこちらにまとめました。
今回は、中だるみしやすい中盤について書いていきたいと思います。
リーダビリティがない
最も多いのが「リーダビリティの欠如」です。こういう欠点多いなというのを、まずは箇条書きでまとめていきたいと思います。
・繰り返し展開が続く(狙ってやっているのはOK)
・無駄が多く、物語が進まない
・その他(棚ぼた展開、主人公がピンチに陥らないなど)
その他については説明がいらないと思うので、残り2つを細かく見ていきましょう。
繰り返し展開が続く
狙ってやっているのであれば問題ありません。問題なのは、そうでないケースです。読者は飽きます。
わかりやすい例を挙げてみましょう。
例)殺人事件が起こる
リーダビリティのある描き方の例
・探偵の相棒、またはヒロインに死亡フラグが立っている
・情報を聞き出す方法が面白く、手法が多い
・警察が探偵役を担う場合は、上司との対立関係とか、命令違反とか
リーダビリティのない描き方の例
・目撃者や関係者にひたすら聞き込みするだけの展開(人を訪ねる⇒話聞くのループ)
・初対面の聞き込み相手がベラベラ情報を喋りすぎ(なんらかの工夫をして喋らせましょう)
例)ボスの打倒に向け、中ボスを倒す展開が続く
ボスの居場所へたどり着く前に、その手下を倒すというのはよくある展開です。これ自体は間違っていません。問題なのは描き方です。
リーダビリティのある描き方の例
・ボスの情報を小出しにしていく(ボスの正体だけでは弱いです。関係性などをうまく小出しにしましょう)
・中ボスが魅力的。「このキャラに生き残ってほしい」と読者が思うかが大事
・中ボスのいる街などで、読者の気を引く出会い、サブエピソードがある
リーダビリティのない描き方の例
・中ボスは情報を渡すだけのアイコンでしかなく、各街までの旅の状況をメインに描く。中ボスが3体いるとすると、似たような旅の状況が3回繰り返されるため飽きます。
・主人公陣営の関係性だけが描かれる(主人公とヒロイン、主人公と従者の関係性のみに焦点を当てる。狙ってラブコメ等に持っていくのなら構わないと思います。ただ、敵陣営が魅力的でないと、他作品と比べたときに「またか」という気になってしまう)
・中ボスの街で起こるイベントがしょぼい。
・ボスを目指しているはずなのに、食べ物とか、観光とか、イチャラブにページがさかれている(物語の主軸はなんですか?)
「自分はリーダビリティのある描き方ができている」と思っている方多いんですが、正直、選考の上位に残る人の作品でさえ、中だるみします。そのくらいリーダビリティを保ってラストまで持っていける作品って少ないです。
リーダビリティを保つわかりやすい手法は、「好きなキャラが生き残るか、または次は誰が殺されるか」、「敵キャラと主人公との関係性は?(敵キャラと主人公の関係性がすでに描かれているのなら、なぜ彼が裏切ったのか?)」のような、読者が気になる情報を入れることです。
また、いわゆるハイワナビは型にはまった展開をうまく書く方が多いです。そのため、それなりにリーダビリティのある構成になっています。が、この「型にはまった展開」が問題です。型にはまっているため、読者は先を想定しますが裏切られません。ようは驚きがないために飽きるのです。
たとえば、学園ミステリだと、「殺人事件が起こる→親友が疑われる→探偵をする→親友の疑いを晴らす→犯人を見つける」のような構図です。実際のところ、これでは型にはまりすぎていてリーダビリティは弱いです。なんらかの読者を裏切る展開が必要になります。
一次は通るという方は、この「読者を裏切る展開」を検討しましょう。
無駄が多く、物語が進まない
前述した「繰り返しの多い展開」も、一種の「無駄が多い」作品になることがあります。
たとえば推理小説。聞き込みにいっても毎回世間話からはじまったり、聞き込みにいくまでに時間がかかったり(聞き込みする⇒次の相手情報を書き込み、それに対する探偵側の所感を述べ、さらにそこへいくまでの道のりを書く⇒聞き込み⇒次の相手情報……ループ)。
情報の取捨選択をしてください。
「無駄が多く、物語が進まない」となると、繰り返し以上にダルい作品ということになります。
例)学園ものの青春ストーリー
リーダビリティのある描き方の例
・信用していたキャラの裏切りがある
・主人公に変化がある(なんらかの成長、クラス等でのポジション変化、家族の問題等によるメンタル変化)
・イベントが起こる(部活のレギュラー争奪戦、イベントによるクラスでのポジション変化、友人の秘密を知る、誰かと敵対する)
リーダビリティのない描き方の例
・キャラが最初から最初まで印象が変わらない
・主人公に意識の変化(またはポジションの変化)がない
・長々と中身のないノリだけの会話が続き、ストーリーが展開しない(学校での日常を書くだけ、部活ものなら練習⇒友情⇒練習⇒たまに試合⇒友情で終わり、ポジション争奪戦などのストーリーが見られない)
・恋愛もので相手との楽しいデートを繰り返し書くだけ(繰り返しデートはイベントではありません。ライバル登場、別れのフラグなど必要)
簡単にいうと、読者の予想を裏切る変化を入れたり、おもしろいイベントを入れたりする必要があります。ただ、それもこれも前半で主人公周辺のキャラクターが立ってないとだめです。読者が気に入っているキャラクターに変化が出る(またはイベントに巻き込まれる)と、リーダビリティは強くなります。
繰り返し展開をさけ、読者の意表をつきましょう。
ご都合主義の展開が多い
これに自分で気づける人は多くありません。そして指摘すると嫌がる方が多いんですよね。
・都合に合わせてキャラが変化する(そのキャラがそんなことする?が多い)
・ファンタジーやSFで後出し設定が多い
・ストーリーでも「そうはならないでしょう」という展開をする(社員や会社が無能すぎる⇒自分以外が無能すぎるうえに、自分も決して有能ではないケースあります。セキュリティがザル。ミステリーなら警察が無能すぎたり、登場人物がベラベラ秘密を喋る。なんでか異性にモテモテ。主人公を神が優遇しすぎている。急に特殊な能力が目覚める)
ストーリーの都合に合わせて、キャラクターや状況を設定しがちです。この部分は可能であれば人に意見をきいたほうがいいと思います。
ご都合主義のすべてが悪いわけではありません。ストーリーの都合に合わせることは必要です(ストーリーを押しすすめるうえで)。ならば、「なぜそうなったか読者が共感できる状況」を作りましょう。
・都合に合わせてキャラが変化する⇒何らかの不幸で人が変わる。前々から裏の顔があるかもというフラグ(伏線)を入れておく
・ファンタジーやSFで後出し設定が多い⇒フラグがあったり、なんらかのイベントによってプラスされたのであれば問題なし
・ストーリーでも「そうはならないでしょう」という展開をする⇒これもなんらかの関係性、設定があればOKとなるケースがあります
上位に行く人たちは、ご都合主義といわれないためのケアをしている方が多いです。それでもご都合主義といわれることもあるようなので、この部分は読み直しのときに「ご都合主義になっていないか?」と意識して探しましょう。
描写が多い
描写というか、地の文と思っていただいてもいいかもしれません。
ときどき「会話と地の文だと3:7(2:8)くらいが読みやすい」とか「描写が少ない作品は読む気になれん」とかって発言(かき込み)を見かけます。たぶん「字が詰まっている作品が好きなんです」アピールだと思うんですが、これを真に受けない方がいいと思います。
というのも、純文学をのぞけば、地の文7割というのはたいへん読みにくいです。ほんとうに読みにくい。
純文学をのぞけば、地の文7~8割は読みにくい
これって、台詞1行に対して、地の文が3行以上という換算になります。地の文8割だと、1行に対して4行……。もちろん、地の文で長く説明するパートとかもあると思いますので、1行書くたびに3行描写しろというわけではないですが……。
ひと言話すごとに描写や説明がなされていては、話が進まないんですよ。会話でテンポよく薦めた方がいい場合だってあります。
描写が多ければいい小説というわけではないのです。
そもそも、うまい描写を書く人は、頭から最後までひたすららよい描写のオンパレードなのではなく、ここぞというときに印象的な描写をしてくるのです。緩急のある文体に読者は乗せられるわけです。会話1行ごとに描写で止められていては読者は乗れません。
内面描写をひたすら行うような作品でなければ、ある程度会話文も必要ですよ。そして会話文が上手い人は描写がなくてもキャラが浮かぶものもあります。
必要であれば地の文8割でも構いませんが、無理して地の文を増やす必要はありません。
追記:とくにダメなのが、バランスも考えず、「これだけ描写力があるんだ」「私の描写力を見よ」(とまでは思ってないかもしれないが)と主張するかのごとく、やたら情景描写や心情描写にこだわることです。実はそこそこ書ける人に多いです。必要であれば構わないのですが、描写を多用することで、ストーリー性やリーダビリティが削がれることがあります。ないのもダメだけど、書き込み過ぎはとくにリーダビリティを下げます。また、描写にこだわる人の多くは、緩急の乏しい作品になることも多いです。すると、中だるみしているという印象を与えます。注意してバランスを取っていきましょう。
それって描写といってもよいものか?
地の文が多い作品でときどきあるのが、「口に出せない感情を一人称で喋りまくる小説」です。
一人突っ込み小説とか、相手への毒舌小説など、おもしろい語り口であればどんどんやりましょう。おそらくその描写が受けて上位進出もありえます。
が、多いのはおもしろくない一人称小説(または三人称で神が主人公を代弁する小説)です。筆が乗るのか、無駄の多い小説になりがちです。映像を見ながら写し取っている感じといったらわかるでしょうか?
情景を書き連ね、説明を書き連ね、さらに主人公の一人語りも多い作品です。
緩急がないので重要なシーンは埋もれますし、読者はどんどん飽きていきます。読者置いてけぼりなんです。
そして、書き手は「私、描写が得意だから」と思っているケースが多く、正直指摘しにくいんですよ。描写といってもとくに表現力があるわけではなく、心情も台詞代わりに地の文を使っているだけといった感じなんですが……。
描写といえば描写なんですが、求められている描写力ではないのです。
うまい人は短くても情景がよくわかる描写をします。うまさを追求して、緩急のある描写力を手に入れましょう。
まとめ
文章がそこそこ書けていて、話に大きな矛盾もない方は多いです。さらに上に行くためには、リーダビリティが必須です。そのうえで読みやすさ(文章・描写の緩急もあればなおよい)が必須です。
すべてのこだわりを捨てろとはいえません。ですが、「自作の面白さがわからないなんて」と思っている方は考えを改めたほうがいいです。
それなりにうまく、小説として大きな瑕疵のない作品だと、「自作を落とすなんて選者に見る目がない!」と思うのも当然です。
でも、上位にいく人たちは「これぞ」という武器を一つは持っています。そのうえで、リーダビリティや斬新さなどを手に入れようと貪欲に動いています。現状維持では数百(場合によっては千を超える)の作品で、上位5、6本に残るのは難しいですよ。